NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。
先人が生み出した型に倣う
美意識を育てる二つ目の方法は、先人が生み出した型に倣(なら)うことです。先人の美意識を身体化させることとも言えるでしょう。
茶道や華道など、「道」のつく芸術はそのアプローチをとっています。「道」というのは、先人たちが美意識を磨いていくなかで、型を通してバトンが受け継がれてきた分野です。
私は茶道を習っているのですが、こうした日本古来の芸道は「美しさ」を常に要求されるものです。座り方はもちろん、お茶室での座る位置に、道具の置き方、お茶の飲み方やその手順など、形式的に思えますが全てに意味があり、それがいちばんバランスがとれていて「美しい」状態になります。
先人が生み出したより美しい型こそ、より自然に近く、真理に近い状態を表しています。道を追求する以上、人はその地点を目指すべきだと考えます。茶道もやはり、先人が創り出した型によって、人の美意識を成長させるものなのです。