NHK「プロフェッショナルの流儀」で紹介され話題沸騰! 1200年続く京都の伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)が、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど、世界の一流ブランドの店舗で、その内装に使われているのをご存じだろうか。衰退する西陣織マーケットに危機感を抱き、いち早く海外マーケットの開拓に成功した先駆者。それが西陣織の老舗「細尾」の12代目経営者・細尾真孝氏だ。その海外マーケット開拓の経緯は、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集めている元ミュージシャンという異色の経営者。そんな細尾氏の初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』がダイヤモンド社から発売。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。同書のエッセンスを抜粋してお届けする。
「現代アート」の出発点は、マルセル・デュシャン
昨今、ビジネスにおいて「アート思考」が注目されています。
いろいろな定義がありますが、「作品を生み出すときのアーティストの思考法を取り入れよう」とか「アートを鑑賞することによって想像の幅を拡げよう」など、共通しているのは、アートの思考を取り入れることで感性や想像力を柔軟にし、ビジネスのイノベーションにつなげていこうとすることだと思います。
「アート思考」が語られるときに多く参照されるのが、「現代アート」です。
現代アートの出発点は、一九一七年にマルセル・デュシャンが便器を「アート」として展示した「泉」という作品だとされています。その時起きたのは「美」から「コンセプト」へ、という転換でした。
しかし、今や現代アートの分野ではその流れが行き過ぎてしまい、人が美を感じるかどうかからはまったくかけ離れて、コンセプトだけを重視する事態が生じています。
美しいかどうかではなく、いかにインパクトを与えるかばかりが重視されているのではないでしょうか。