改正貸金業法の完全施行から2年半。法改正を成立させた自民党は与党に返り咲き、その政策集の中で貸金業法の再改正をうたう。自らの失敗を認めた格好だが、その間にヤミ金業者の手口は、ますます巧妙化するばかりだ。昨今では、ヤミ金業者が自らの債務者を犯罪の“手駒”として利用するケースが急増している。

かつて繁華街のネオンを巨大な看板で埋め尽くした消費者金融の多くが、倒産や事業を縮小する(右)。一方、ヤミ金の看板は今でも、撤去が追い付かないほど街の至る所にあふれ返る
Photo:JIJI

 2012年6月、埼玉県警で前代未聞の不祥事が明るみに出た。

 巡査部長が新たに開設した銀行口座の通帳やキャッシュカードをヤミ金業者に渡し、代償に5万4000円の現金を受け取っていたことが発覚したのだ。もちろん、県警は、この警察官を懲戒免職処分とし、詐欺などの容疑で書類送検した。

 だが、ある首都圏の県警幹部はため息交じりに明かす。

「埼玉県警に限らず、最近、うちの県警でもヤミ金に手を染めた警察官が処分される不祥事は後を絶たない」

 貸出枠を年収の3分の1までとする総量規制や、上限金利の引き下げなどを盛り込んだ貸金業法の改正以降、消費者金融からカネを借りられなくなり、違法なヤミ金業者に流れる構図は、警察官も一般の債務者も変わらない。

 近年、この埼玉県警の不祥事のように、ヤミ金業者が、返済金の免除や融資の代償として、債務者を“手駒”として利用し、骨の髄までしゃぶり尽くそうとするケースが顕著になっていると、業界関係者は口をそろえる。

 仙台市の自営業、水澤隆さん(仮名)もその1人だ。東日本大震災の直後、カネを借りていたヤミ金業者から、ある高額アルバイトを持ちかけられた。

「連絡がつかない債務者が大勢いる。彼らの家の被災状況を携帯電話のカメラで撮影して、報告してほしい」──。