今年3月に緊急事態宣言などが全面解除されたことで、3年ぶりに制限のない大型連休となり、多くの帰省客や観光客でにぎわった。コロナ禍で客足が遠のいた飲食店もお客が戻り、コロナ前の盛況を期待する声も高まっている。ところが、全面解除後に来店客が一巡した飲食店では、客足が再び途絶える店も出始めた。コロナ禍で消費者の行動が変化し、期待と不安が織り混ざった飲食業の現状を東京商工リサーチが調査した。(東京商工リサーチ情報部 後藤賢治)
倒産件数が2年連続減少の
裏側にある深刻なリスク
コロナ禍で飲食店を利用する顧客の習慣が変わった。飲食時以外のマスク着用や人数制限が求められるなど、コロナ対策の浸透で、気楽に利用することがはばかられるようになった。感染防止に気を使う高齢者はなおさらだ。さらに、在宅勤務を継続する会社も多く、多くの店舗では来店客がコロナ前に戻るまでには至っていない。
コロナ前から飲食業は競争激化や人手不足の影響を受け、倒産(負債1000万円以上)が増えていた。コロナ前の2019年度は過去30年間で最多の841件を記録し、そこに新型コロナが追い打ちをかけた。もともと小・零細規模が中心の業態だけに倒産の急増が懸念され、実際にコロナの影響が広がった2020年6月は98件が発生した。
ところが、2020年度は784件(前年度比6.7%減)、2021年度は612件(同21.9%減)と2年連続で減少した。