FRBも知らない経済の「制限速度」米国では2019年10-12月期以降、労働生産性の伸びが年率わずか1.1%にとどまっている Photo: Celeste Noche for The Wall Street Journal

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 景気を過熱させることなく進んで行ける速度には限界がある。目下の大きな問題は、その速度がどの程度か、誰も確信できていないことだ。

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)前には、米経済はしばらく低速モードから抜け出せていないかに見えた。生産性の伸び(一定時間内により多くの作業をする労働者の能力)が蒸発する一方、高齢化によって労働力の拡大が減速した。その結果、大半のエコノミストは、インフレを招くことなく経済が最大限に成長できる目安を示す国内総生産(GDP)の潜在成長率が低下したと考えた。米議会予算局(CBO)は、2019年までの10年間の潜在成長率が年間平均1.7%と、1990年代の3.1%から後退したとの推計を示した。

 コロナ危機は多くを一変させたが、良い方向に変わったかもしれないことの一つに、潜在成長率がある。パンデミック中に進化した新たな効率性は、あたかも恒久的な生産性の伸びをもたらすかのようだ。一方、在宅の勤務形態の到来は、長期の労働力供給を押し上げるかもしれない。