「Q資料」の存在が注目された理由
すなわち、マタイ、マルコ、ルカの3つの福音書には共通する元資料があるのではないか、という見解が登場したのです。
この学説はドイツのプロテスタントのキリスト教学者から出てきました。
彼らは、この新資料のことをQ資料と呼びました。
Qとは資料を意味するドイツ語Quelleに由来します。
Q資料の問題は、20世紀に入って再び注目を集めます。
1945年にエジプトで大量に発見された「ナグ・ハマディ文書」の中から、ほとんど完全な形を保つ『トマスによる福音書』(外典)が発見されたのです。
この福音書はイエスの12使徒の一人、トマスによって語られたという仮定で書かれているのですが、新約聖書の4つの福音書と違って特徴的なことは、イエスの行動や物語の記述がほとんどなく、ほとんどすべてがイエスの言葉だけを並べた「語録集」であることです。
そこで『トマスによる福音書』が、Q資料ではないかという学説が出てきています。