キエフのウクライナ軍の兵士ロシアに軍事力で大きく劣るウクライナ軍は予想に反して善戦している。その理由はどこにあったのか? Photo:SOPA Images/gettyimages

クリミアを無血併合した
ロシアのハイブリッド戦

 2月22日に開始されたロシア軍のウクライナ軍事侵攻は迅速だった。紛争直前に米国情報機関は「ロシア軍が侵攻した場合、キエフは2日以内に陥落する」と分析していた。

 ところが軍事力で大きく劣るウクライナ軍は予想に反して善戦している。その理由はどこにあったのか?

 ロシア国防省は戦闘開始の24日早々に「ウクライナの軍事インフラ、防空システム、軍用空港、空軍は高精度の兵器で無力化された」と声明を出した。そのため、侵攻直後にウクライナは壊滅的な損害を受けた可能性があるとして、多くのメディアがロシア優勢と報じた。

 同日にはウクライナの首都キエフ、ハリコフ、ドンパス、オデッサ等で爆発が確認された。複合的攻撃でロシア優勢を印象づけ、「戦いは終わった、すでにウクライナは現状変更された」と欧米諸国に誤認識させれば支援や抵抗を阻むことができ、ロシアの勝利は容易だ。

 だが、ウクライナの防空網は今も健在であり、3月10日、オデッサへの上陸作戦を試みたロシア軍揚陸艦もクリミアへ引き揚げた。開戦直後のロシア軍優勢情報のほとんどが意図的に発信された虚偽情報だったことが明らかになってきた。