俳優の渡辺裕之さん、タレントの上島竜兵さんが急死した。元気で活躍しているイメージの二人の訃報が続いたことに、大きな悲しみと衝撃を受けている人も多いのではないだろうか。毎年なぜか5月頃になると、有名人の訃報と“いのちの電話”への紹介が多くなる……それは気のせいではなく、5月は本当にそういう時期なのだという。(コラムニスト 河崎 環)
人前でハイテンションに演じる仕事は、そううつ病と相性がいい
2022年のゴールデンウイーク、芸能界の訃報が続いた。
「○○さんが急死」と報じる短いネット記事末に「いのちの電話」への紹介があって初めて、読者はそれが自死であったと知るが、この報道スタイルが浸透したのは2年前、コロナ感染拡大による初の緊急事態宣言下での出来事がきっかけだ。在宅を強いられ、先行き不透明な社会不安の中、人々はネットニュースやテレビなどに殺到して情報を求め、有名人の急死が相次いで報道されるとSNSではさまざまな感想が飛び交い、ワイドショーなどのテレビ番組で大きく取り上げられた。その急死報道の中には、コロナが理由のものもあったが、そうでないものもあり、「有名人が亡くなった原因をそこまでつまびらかにし、あれこれ臆測するのは失礼だし、社会への影響も強く、連鎖を起こしかねない」との批判から、マスコミがコンプライアンス懸念で一斉に「自殺」という言葉を忌避し、ニュースとしてそれ以上詳しく報じない方向へかじを切ったのだった。
だが世間もさすがに気づいている。「そういえば、なぜか毎年5月くらいになると、有名人の『いのちの電話』関係の訃報が多いのではないか」。精神医療の従事者はその理由をおよそ分かっているが、あえては言わないのだそうだ。