自民党が3年4ヵ月ぶりに国政に返り咲いた。
「強い経済の再生」を選挙公約に掲げて政権与党の座を勝ち取った安倍・自民党は、デフレ脱却のためにインフレターゲットを設定し、大胆な金融緩和や公共投資を行うといった経済政策を打ち出している。
年明け早々に日本経済再生会議、産業競争力会議といった新たな経済会議を創設したほか、民主党政権下で廃止された経済財政諮問会議、規制改革会議も復活させているが、この動きに呼応して、またもや経済界から噴き出してきたのが医療・介護、環境、農業といった分野への規制緩和要求だ。
規制緩和は、その分野に新たな企業が参入できたり、自由な経済活動ができるなどプラスイメージが語られることが多い。しかし、いいことばかりなのかは大いなる疑問だ。
企業にとっては参入障壁でも
規制は国民の身を守る重要な盾
日本の医療は、国が管理する公的な健康保険で運営されており、病気やケガをして医療が必要になった人を加入者みんなで助ける仕組みになっている。財源は国民が支払った健康保険料と税金、そして患者が支払う一部負担金だ。
公共性の高いものなので、「誰もが平等に医療を受けられるか」「安全性が保たれるか」などの観点から国がさまざまな規制をかけている。人々の暮らしを守るためには一定の規制は必要なので、人が生きるために必要な医療分野は、全面的に市場にゆだねてはいけないものだと筆者は思っている。
しかし、医療によって発生するお金のやりとりをビジネスチャンスと捉える立場から見ると、高齢化で需要が年々伸びる医療分野は利益を見込める成長産業だろう。安全性、平等性を保つための規制は、一変して参入障壁になる。
そのため、医療分野でのビジネスチャンスを狙う国内外の人たちからは、繰り返し「混合診療の全面解禁」「医薬品・医療機器の値付けの自由化」「株式会社による病院経営」といった規制緩和要求が行われてきた。