――よく見るコメダ珈琲店と少し違う印象ですね。

石黒 コメダといえば、木とれんがでロッジ風に仕立てた内観に、赤い座面のくつろげるボックス席というのが定番ですが、この新しい店舗は全く異なります。銀行の店舗とフロアが合体しているので、銀行として違和感がないようなデザインになっています。外観は壁一面をガラス張りにし、内観は木を使い、モダンな雰囲気にまとめられています。東濃地域に欠かせない美濃焼も飾られています。

 この背景には、地域を盛り上げるためには画一的な店ではなく、地域の文化に根差した店が必要だという考えがあります。ただ、それ故に苦労もありました。

――何があったのですか?

石黒 コメダ珈琲店のFC本部さんとは、特徴的な店舗づくりについて長い時間をかけて議論しました。チェーンの個性を変えるような店舗デザインですから、当然といえば当然です。しかし、「地域を盛り上げたい。そのためにはコメダさんが必要だ」と何度も通って熱意を伝え、1年がかりでようやくゴーサインを頂きました。オープン当日はこの小さな店舗のセレモニーのために、わざわざコメダホールディングスの臼井社長が来てくださいました。

 今回の店舗のように、新たに建てる金融機関の建物に喫茶店を併設するケースはこれまでにはなく、全国初の試みです。銀行にカフェが併設されている店舗は他にもあるのですが、実はどの店も既設の店舗に併設しているのです。この東濃地域で、日本初の形態が実現しました。

――隠れたご苦労があったのですね。

信用金庫とのコラボで日本初のカフェをオープン。地域のために生きていく土岐市駅周辺を盛り立てようと、東濃信用金庫土岐中央支店とコメダ珈琲店がコラボして開設した店舗
●石黒商事株式会社 事業内容/小売業、総合商社、従業員数/114人(2021年12月末時点)、売上高/36億6000万円(2021年12月期)、所在地/岐阜県土岐市泉町久尻20-16、電話0572-55-2153/、URL/ishiguro-shouji.co.jp/index.html

石黒 開店後も新型コロナの影響もあって十分に集客できているとはいえませんが、常連のお客さまが少しずつ増えてきました。人口が減少する中で、いかに地方都市を盛り上げるか。その課題を解決する意味で、店舗の方向性は間違えてはいなかったと感じています。

――今後の抱負を教えてください。

石黒 私は先代の父より引き継ぎ、17年に4代目の社長に就任しました。あらためて、当社の歴史を振り返ると、ここまで生き残ってこられたのは、地域の方々を豊かにするために、常に新たな挑戦をしてきたからだと感じています。これからも「地域のために」という軸をぶらさずに、新しい挑戦を続けていきます。

(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2022年6月号掲載、協力/東濃信用金庫