利上げで高まるFRB損失リスクPhoto:Drew Angerer/gettyimages

 米連邦準備制度理事会(FRB)が高インフレに対処するために計画している積極的な利上げは、見過ごされがちだが不快な副作用をFRBにもたらす可能性がある。それは資本損失だ。

 損失が出るかどうかは、金融政策をめぐる分かりにくい資金の流れにかかっている。FRBのバランスシートとも呼ばれる9兆ドル(約1150兆円)規模のポートフォリオは、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)というおおむね利付きの資産で満たされており、平均利回りは2.3%となっている。一方、バランスシートの負債側には、やはり利付きである準備預金と、流通貨幣がある。

 2008年の金融危機以前は、FRBは1兆ドル未満という比較的小規模なポートフォリオを維持していた。主な負債は流通貨幣の量だった。FRBは、短期金利を引き下げるか引き上げたい場合には準備預金を徐々に増減させた。

 金融危機が全てを変えた。FRBは金利をゼロに引き下げるとともに、大量の債券を購入し、経済を支えるために銀行システムを準備預金であふれさせた。また、金利の管理方法を見直した。FRBは大規模なポートフォリオを持つことで、銀行システムをより多くの準備預金でいっぱいにし、それらの準備預金に利息を支払うことで短期金利をコントロールする新しいやり方に切り替えた。