警備員という仕事に対して「気楽そう」「うらやましい」といった印象を持つ人もいるだろう。だが実際は、勤務中は常に緊張感があり、肉体的・精神的負担も大きく、おまけに薄給である。過酷な労働環境だが、勤務先の屋上で恋人とデートを楽しむなど、あの手この手で怠ける“ダメ社員”も存在する。知られざる警備員の労働・給料事情を、経験者のライターが赤裸々に告白する。(ブックライター/元高層ビルの警備員 堀田孝之)
警備員の勤務時間は
丸一日が常識!?
オフィスビルやショッピングモールで働く警備員の姿を見て、「気楽そうな仕事だな」と思ったことがある人もいるでしょう。実は私がそうでした。私は20代のころ、「気楽な仕事」を求めて高層ビルの警備員になりました。けれど、実際に警備員になってみると、その労働事情は想像を絶するものでした。
まず、私が赴任した高層ビルの働き方は25時間連続勤務でした。朝の8時に業務がスタートすると、翌朝9時までビルの中に居続けなければなりません。一応、昼休憩が1時間、夜休憩が1時間、仮眠時間が4時間確保されていましたが、睡眠不足は否めず、体が慣れないうちはつらいものでした。
中でも、新人は夜7時から11時までが仮眠時間に設定されていましたが、そんな時間に眠れるわけがありません。休憩時間も含めて25時間起きっぱなしで、そのまま働くことも多かったです。
仮眠ベッドが異臭を放っていたことも苦痛でした。ベッドはカプセルホテルなどで使用されるタイプのものでしたが、マットレスは常に湿っており、魚が腐ったような匂いがしていました。不潔な同僚がシャワーも浴びず使用していたからです。地獄のような環境でした。
年収数千万円のビジネスエリートたちが働く、全面ガラス張りのキラキラしたビルの地下では、年収200万円の警備員たちが、異臭を放つベッドで疲れを癒やしているのです。
では、25時間に及ぶ勤務中、警備員はどんな仕事をしているのでしょうか?