「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳

年齢なりにメイクやスキンケアをもう少しちゃんとしたいけど、雑誌や動画で知識ゼロの自分に合う情報を探し当てるのは面倒だし、デパートのメイクカウンターに行くのもおっくう……そんな「メイク迷子」を自認する編集者が企画して大ヒットしているのが、『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』。メイクのポイントだけをわかりやすくマンガで教えてくれて、役に立つけどクスッと笑える美容マンガです。
「平行眉」や「アイシャドウの縦グラデ」など、具体的アドバイス満載のこの本ができるまでの紆余曲折や、独自の点について、担当編集者の田中怜子さん(ダイヤモンド社)に聞きました。(構成:書籍オンライン編集部)

デパートのコスメカウンターが怖い……

──これまで多くのビジネス書を手掛けてきた田中さんですが、メイク本を作ったのは初めてですよね? この本を作ろうと思ったきっかけや背景を教えてください。

田中怜子(以下、田中):そもそもは『40歳メイク1年生』というタイトルをパッと思いついたのがきっかけです。

 私は大学生のときに本格的にメイクをするようになったものの、その後20代、30代は忙しくてメイクやスキンケアに全く無頓着の人生でした。それが出産後、肌荒れがひどくなって……職場に復帰するのにこれはまずいと思って、これまで怖がって近づいていなかったデパートのコスメカウンターに行ってみたんですね。

 そうしたら美容部員さんから「ファンデーションはブラシで塗るといいですよ」とか「お客様の肌荒れは乾燥が原因ですね」とか、いろんなことを教えていただいて……(※まだ新型コロナウィルス感染症が流行する前で、タッチアップもしていただきました)。

 自分はメイクについて何も知らなかったなあ、もう遅いかもしれないけど私のようなアラフォーから、もう一度メイクやお肌のことを学べる本があったらいいのになあと思って企画しました。

「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳ランコムだって荷が重い……。「発売前のカウントダウン画像として、著者の吉川先生が私のエピソードも描いてくれました」(田中さん)。

学びのある実用書に!

「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳田中怜子(たなか・れいこ)
書籍編集者
1981年生まれ。編集プロダクション、出版社を経て2019年にダイヤモンド社入社。主にビジネス書を手がける。担当作は『独学大全』『発達障害サバイバルガイド』など。(イラスト:ふるえるとり)
『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』のTwitter公式アカウントはこちら

──著者さんはどのようにして見つけたのですか?

田中:実は、企画の「タイトル」は思いついたものの、なかなか著者さんが見つからないまま1年以上経っていました。

 デパコスのカウンターに行くのが怖いくらいの人間なので、美容の専門家の先生の動画や写真を見ても「私には無理だなあ」と尻込みしてしまっていたのです。

 そんなある日、たまたまTwitterで、吉川景都先生とBAパンダさんのマンガを拝見して「これだ!!!!!!!!」と思い、すぐにご連絡を取りました。

 著者のお二人は「面白いエッセイ止まり」ではなく「学びのある実用書にしたい」との思いがあったとのことで、ダイヤモンド社と組んでくれることになりました。

「時代遅れ」「NG」「ブス」…などと否定しない

──クスッと笑えるコミックエッセイ的な面白さや、メイクの解説のわかりやすさなど、色々な要素が詰まった1冊ですよね。この本を作り上げるうえで一番腐心された点を教えてください。

田中:一番気をつけたのは、できる限り「誰も(自分たちも)否定しない」ことです。「◯◯は時代遅れ」「◯◯はNG!」「自分はブス」と切り捨てる方が表現もわかりやすいしシンプルなのですが、それによってメイクが楽しくて、自由なものであるという根本的な部分を忘れてしまうのが、一番よくない。これが著者さん二人の強い思いでした。

動画にできなくてマンガだからできることとは?

田中:さらに、「このマンガでしかできないことをする」ことも意識しました。

 メイク動画・画像やSNS上のコスメ情報は大量にあり、プロセスのわかりやすさなどは動画にかないません。そうした細部を競うのではなく、

・「そもそもなぜこれをするのか?」など、根本的なポイントを伝える
・「役立つ」だけでなく「面白い」を忘れない

 この2点にはこだわって編集しました。

「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳アイシャドウの量をごはんで表現したイラスト(笑)。「私が、説明のために安易に写真を入れようとしたら、吉川先生が『こっちの方が面白いのでは?』とアイデアを出してくれました」(田中さん)。

「年齢切り」にしなかった理由

──特徴的な長めの書籍タイトル『メイクがなんとなく変なので友達の美容部員にコツを全部聞いてみた』ですが、これはいつどういう形で決まったのですか?

田中:冒頭でお伝えした通り、最初に思いついたタイトルは『40歳メイク1年生』でした。が、本の内容がかなり本質的で、全ての年代に使えるものになったので、「40歳」と年齢で区切ってしまうのはもったいないかも……と思うようになりました。それで、タイトルを変更することにしたのです。

 吉川先生がパンダさんに相談したときのシチュエーションをそのまま言葉にした結果、今のタイトルになりました。

「メイクがなんとなく変」「気づけば5年以上メイクを変えていないあなたへ」などの言葉について、読者の方に共感してもらえるのか、あるいは拒否感が出てしまうのかの判断が難しく……自分の中でも悩みに悩んで決めたので、出版するまで不安でいっぱいでした。

──たしかに、発売前に田中さんがめちゃくちゃ不安がっていた姿を見たような……。

実用書は「使ってもらってナンボ」

──でも発売直後から大きな反響がありましたよね。「Twitterで見ていたときから気になってた」「とにかくわかりやすい」「メイク頑張ろうかなと前向きな気持ちにさせてくれる」など多くの声が寄せられて、すでに紙・電子累計で10万部突破と破竹の勢いです。著者さんや田中さんにとって、特に印象に残っている読者の方の感想や意見があれば教えてください。

田中:本当にたくさんの感想をTwitter上やレビューでいただき、反響に驚いています。

 とにかく「こういう本を待ってた!」という反応が多くてとてもうれしいです。「私のレベル、低すぎるかな?」と心配しながら編集していたので、共感してもらえて仲間・同志が増えた感覚です。

 あと、印象的だったのが「早速ブラシを洗いました!」「アイシャドウの縦グラデ、やってみました!」と読んですぐに実践に移してくださった方がとても多かったこと。実用書の価値は使ってもらってナンボだと思っているので、ホッとしています。

──最後に、特に好評だった項目や、今から読まれる読者の方におすすめの項目を、教えてください!

田中:眉毛の章は、「これで顔が変わった」という人が続出しているので、おすすめです。私自身も同僚から「なんか最近あか抜けたね」と声をかけてもらいましたっ!!

 それからスキンケアのページも個人的には目からウロコでした。「化粧水や乳液は、まず使用方法読んでね」とか、あたりまえのようでいて、情報過多の時代に誰も教えてくれなかったことが書いてあります。

「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳ウェブの記事でも大反響だった「平行眉」のつくり方。「この本が、『眉毛の上側を触るのはタブー』と思い込んでいた私の人生を解放してくれました!」(田中さん)。
「メイクが苦手な編集者」が発案!異例の美容本がベストセラーになった訳