生きものの絶滅確率は99.9%――つまり、ほぼすべての生きものは絶滅する運命にあります。絶滅に至るさまざまな背景を、子どもたちにもわかりやすく面白くまとめた書籍『わけあって絶滅しました。』は、シリーズ累計90万部のベストセラーに。同シリーズを企画・編集し、テレビ番組「セブンルール」でも取り上げられるなど話題の編集者・金井弓子さん(ダイヤモンド社)に、「絶滅」の奥深さについて語ってもらった前編、同シリーズの第2弾、第3弾で「繁栄した生きもの」「いま絶滅しそうな生きもの」などに触れた背景について聞いた中編につづき、この後編ではシリーズ最新作の絵本『わけあって絶滅したけど、すごいんです。世界一たのしい進化の歴史』づくりや、生きものの標本を見て楽しむコツを聞きました。(書籍オンライン編集部)
32ページで進化の流れを学べる絵本
――今年7月に発売されたばかりのシリーズ最新作『わけあって絶滅したけど、すごいんです。世界一たのしい進化の歴史』は、4冊目にして初めての「絵本」です。
金井弓子(以下、金井):それまでの『わけあって絶滅しました。』シリーズ3冊は、小学校4年生を仮想読者として考えて作りましたが、実は小学校入学前の小さなお子さんに親御さんが読み聞かせてくださっている、というお話も沢山聞いたんです。だったら次は、そのまま読み聞かせにぴったりの絵本を作ろうということで、シリーズ作のイラストを描いてくださっていた絵本作家のサトウマサノリさんにまとめてもらいました。
――金井さんはいつも「小学校4年生の気持ちでいる」と言ってますよね(笑)。
金井:気持ちというか、自分の知性や性格が小4レベルだと心から思っているんですけど……(笑)。
子どもたちを見ていると、小学5~6年生って大人顔負けの知識や思考力を身に付けているように思います。もちろん、大人と一緒というわけではないですが「自分の興味」がはっきり、定まっている人が多いように感じます。小学4年生はその手前の柔軟な時期かなという印象があるんですね。それに、4年生までに習う漢字をマスターできると、読めるものの幅が広がるし、基礎学力が高まるということもあるので、「4年生が楽しめる本をつくる」というのは児童書をつくるうえで常に意識しています。ただ今回の絵本は3年生以下も含め、さらに幅広い層に楽しんでいただける作りになっていると思います。
――最新作の絵本のストーリーを一言で説明していただくと……。
生きものたちが、目やひれ、あごなど新しい機能や能力を獲得したことを、みずから「すごいでしょ」と自慢しつつ説明していきます。生きものが進化を通じて地球で生きていくうえで有利な形質を獲得していくのだけど、途中ですべてを無に帰す大絶滅が起こる! という物語です。
書籍編集者。ダイヤモンド社書籍編集局第一編集部副編集長
大学卒業後に実用書出版社に入社し、営業職を経て書籍編集職に。『ざんねんないきもの事典』など、児童書から女性実用まで幅広い企画を担当。2016年にダイヤモンド社に入社。シリーズ累計販売部数90万部の『わけあって絶滅しました。』のほか、同58万部の『東大教授がおしえる やばい日本史』『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』『東大教授がおしえる やばい世界史』、同35万部の『せつないどうぶつ図鑑』『生まれたときからせつない動物図鑑』などを担当。(写真撮影:和田佳久)
今回も大型付録が…
――この絵本は、企画段階の仕込み期間がかなり長かったと聞きましたが、いちばん時間がかかったのはどの部分ですか。
金井:ストーリー案をつくるのに1年近くかかりました。わずか32ページの中で進化のストーリーを面白く伝えるのが難しく、絵本作家のサトウマサノリさんにはおそらくストーリーだけで10通りぐらい、それぞれについてラフを3通りぐらい起こしてもらったと思います。
――ギョーーっ!!
金井:ですよね(笑)。サトウさんと1~2週間に一度お目にかかって、イラストのラフを見ながら相談して……というのを繰り返しました。サトウさんも「苦しい。すごく悩む」と仰っていましたが、ストーリーが固まってからも、ページをめくるたびに世界観が変わるよう、使用する絵具なども試行錯誤してくださるなど、色使いや構図まですごく工夫して描いてくださっています。
そのイラストのすばらしさを活かせるよう、細心の注意を払いました。カバーの色校が出たときも、色味の異なる2種類を出して、店頭で並べてみて見え方をチェックして決めました。
――そして、この絵本にも巨大な付録が……。
金井:今回も(読者の方が物足りないといけない……)と不安に駆られて(笑)、切り取ってお部屋にも貼れる長さ1メートル弱の年表が付いています。その裏側は、生きものの体型や大きさがわかるイラストになっています。
――これは壁に貼っていつも見ることができたら、楽しそうだし、生きもの好きにはたまらないですね。