壁を超えたら人生で一番幸せな20年が待っていると説く『80歳の壁』が話題になっている今、ぜひ参考にしたいのが、元会社員で『島耕作』シリーズや『黄昏流星群』など数々のヒット作で悲喜こもごもの人生模様を描いてきた漫画家・弘兼憲史氏の著書『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)だ。弘兼氏のさまざまな経験・知見をもとに、死ぬまで上機嫌に人生を謳歌するコツを説いている。現役世代も、いずれ訪れる70代、80代を見据えて生きることは有益だ。コロナ禍で「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにして、どのように「今を生きる」かは、世代を問わず、誰にとっても大事な課題なのだ。人生には悩みもあれば、不満もあるが、それでも人生を楽しむには“考え方のコツ”が要る。『死ぬまで上機嫌。』には、そのヒントが満載だ。
※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』より一部を抜粋・編集したものです。

【漫画家・弘兼憲史が教える】妻に依存してきた夫の末路作:弘兼憲史 「その日まで、いつもニコニコ、従わず」

死ぬ順番が回ってきただけ

配偶者の死について考えてみましょう。現実的に考えて、夫婦が同時に死ぬ可能性はきわめて低いですから、いずれは夫婦のどちらかが先に死んで、一人が残されます。男性はなんとなく「オレのほうが先に逝くだろう」と考えているかもしれません。ところが、現実というのは皮肉なもので、そんな人に限って妻に先立たれてしまったりします。

こうなると、夫は大きなショックを受けます。妻に依存してきた夫ほど、現実を受け止められず、ふさぎこんでしまいがちです。僕の周りにも、そんな人がいました。彼は若くてきれいな後妻をめとり、楽しそうに暮らしていたのですが、その妻の死を機に様相が一変しました。明らかに気落ちした彼はうつ状態になり、自宅にひきこもって暮らすようになりました。挙げ句の果て、妻の後を追うようにあっけなく亡くなってしまったのです。

配偶者が亡くなれば、彼のようにまるで心に穴が開いたような喪失感を感じ、精神的に落ち込むことでしょう。でも、いざ現実に直面してから「順番が違う」などと嘆いても、仕方がありません。いくら悲しんでも、死んでしまった人は戻ってこないのですから。「ああ、ついにこのときが来たんだな」「そういうものだから仕方がない」と割り切るしかないのです。

絶望の淵に立たされたときの対処法

「今まで人生の先輩たちが、こういう経験をしてきて、その順番がたまたま自分に回ってきただけ。これが人生というものだ」。時間をかけながら、そう悟って受け止めるのが唯一の方法なのでしょう。現実というのは往々にして理不尽です。新型コロナで突然家族を失った人もいれば、交通事故で失った人もいます。現実を受け止めたくないと思っても、時間は待ってはくれません。

人間は、一生のうちにショックな出来事や悲しい出来事の10や20は体験するものです。そうした出来事が一度に三つくらい重なると耐えきれず、自ら死を選んでしまうともいわれます。だから、どんなにつらく苦しくても、一つひとつ乗り越えて前に進んでいかなければなりません。

妻と自分のどちらが先に死ぬのかわからないですし、どちらが先でもいいと僕自身は思っています。せめて子どもは、私たちの後であってほしいとは願っていますが、その願いがかなえば十分だと思うのです。

※本稿は、『死ぬまで上機嫌。』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。