支出を過度に切り詰めなくても
老後は心配なし

 Uさん夫婦の年金額は、前述の通り年額230万円です。年間支出は、息子さんの独立・就職などに伴って少し減る(40万8000円減額)と仮定して先ほど試算したので、ここでも306万円(346万8000円-40万8000円)とします。

 年間赤字額は、この収支の差額である76万円。くしくも、先ほどの試算(住宅ローンの繰り上げ返済をしない場合・75歳以降)と同じ金額です。

 60~65歳の年間黒字額はかなり少ないため、65歳時点の金融資産額は便宜上、60歳の住宅ローン完済時と変わらない3175万円とします。ここから毎年76万円を取り崩す場合、そこから約41.8年(Uさん106.8歳まで)は持ちこたえられます。

 繰り上げ返済を行わないケースとほぼ同じですので、住宅ローンを気にせずに老後を過ごす方が精神的に楽だという場合は、繰り上げ返済を選択するのも手です。

 簡単な試算を行いましたが、Uさんは支出を過度に切り詰めなくても、老後は心配ないと思われます。試算には、Uさんが相談文に記載した義父からの相続資産などを一切含んでおらず、さらに余裕が出る可能性があるからです。

 この試算結果に、相続資産を加味した上で、Uさんが考えるライフスタイルを過ごす場合の貯蓄ペースを考えてみてください。

 ただし、今回の試算ではあまり言及しませんでしたが、長男の成長とともに生活費が想定以上に増える可能性はありますし、塾以外の習い事(英会話やスポーツなど)に通えば出費はさらにかさみます。

 こうした追加支出を考えると、金融資産に占める現預金の割合が50%を切っているのは気掛かりです。万が一のことを考えて現預金の割合を引き上げ、投資との比率を半々にしておくことをお勧めします。

(ファイナンシャルプランナー 深野康彦)