いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

外資系ヘッジファンド20年在籍の投資のプロ・伊藤潤一が「これだけはやっておけ!」と東大生に激推ししている「5つの教え」Photo: Adobe Stock

東大金融研究会が強力に推奨する5つのこと

東大金融研究会のメンバーに私が「強力推奨」する5項目を共有したいと思います。

①言葉の定義付けをしっかりする
②自分の頭で考える・自分の言葉で表現する
③自分の手を動かす
④発想のダイナミックな展開、転換
⑤相互扶助

まず大事にしてほしいのは、①「言葉の定義付けをしっかりすること」です。

たとえば私が「頑張りましょう」と言ったとき、その言葉を聞いたAさんが受け止める「頑張りましょう」の意味は、私と異なるのが当たり前だ、という前提からスタートしなければなりません。私が、「私とAさんが共有できる時間の範囲で適宜、頑張ってやっていきましょう」と考えているときに、Aさんは「可能な限り時間を優先的に割き、なるべく早く仕上げたい」と考えているかもしれないのです。この場合、「頑張る」の定義が、私とAさんではまったく違っています。

言葉の定義付けをあいまいにしたまま物事を進めると、それが原因でコミュニケーションのミスが発生することがあります。Aさんが私に「ちゃんとやってくださいよ!」と怒り、私が「いや、ちゃんと頑張っているんだけど……」と不機嫌になる場面は想像しやすいでしょう。本当に大事なことは抽象的な言葉で終わらせず、お互いの解釈をわかりやすく伝え合って共通の定義を明確にすることが必要です。

②「自分の頭で考える」というのは、何度も本書で触れてきたことです。さらに、それを「自分の言葉で表現する」こともぜひ意識的に実践してください。

いまは何でもネットですぐ調べることができますから、瞬間的にそこで使われていた表現を覚え、そのまま口から出すことは簡単です。「それらしく語る」ことも容易いでしょう。しかし自分で考え、自分の表現に変換してアウトプットするのと比べれば、その中身は薄く、自分にも他者にも印象を残さないものです。東大金融研究会では、単なる知識の受け売りと思われる発言は「議論の場のクオリティを下げる」という理由で私から注意しています。

③「自分の手を動かす」というのは、たとえば本書でGDPの内訳のグラフが出てきましたが、あのようなグラフを自分で数字を入力してつくることです。ただ図をネットから拾ってきて貼り付けるのとでは、理解の深まり方や記憶への定着の仕方、その先の思考の発展の仕方などに差がつきます。適当に集めたグラフを組み合わせてお茶を濁すのか、元のデータに当たって自分で数値を確認しながら集計してみるのか。日々の作業の中身の違いが、積み重なると大きな差になっていきます。

④「発想のダイナミックな展開、転換」について。私が伝えたかったのは「浅い固定観念にとらわれて思考を止めてはならない」ということです。発想をダイナミックにできないときは、何がボトルネックになっているのかを自分で考え抜かなければなりません。ネット検索で簡単に「答え」が見つかる今、「時間をかけて考えること」の重要性は何度言っても言い足りないと感じます。

最後に挙げた⑤「相互扶助」は、東大金融研究会が大切にしたいことです。

これは「お互いに助け合いましょう」という意味とは少し違います。助け合いはもちろん大切ですが、それだけではなく、一人ひとりが「人に何かを与えられる人」になってほしいと思っています。人に何かを与えられるようになるには「人に与えられるものを持つ」ことが必要ですし、その過程は面倒なものです。しかし面倒なことを買ってでもやり、「与えられる人」になって初めて「一人前」なのです。少々、精神論めいた項目かもしれませんが、私は東大金融研究会を「相互扶助」が働く組織にしていきたいと強く思っています。

あなたにも、この5項目を強力推奨し、本書のまとめとしたいと思います。

あなたが、この本で伝えたことを1つでも活かしながら、自分の幸せを軸に人生を選択していってくださることを願っています。

(本原稿は、伊藤潤一著『東大金融研究会のお金超講義 超一流の投資のプロが東大生に教えている「お金の教養と人生戦略」』から一部抜粋・改変したものです)