経営再建中の大手自動車部品メーカーの持ち株会社「マレリホールディングス」は6月24日、民事再生法に基づく簡易再生に向けた手続きを東京地裁に申し立てた。私的整理の一つである事業再生ADRを申請したものの不成立となったことから、法的整理に移行する。従来、大型案件では会社更生法を選ぶケースが多かったが、マレリは異例ともいえる簡易再生を選ぶこととなった。その背景とは。(帝国データバンク情報統括部 内藤 修)

マレリのADRは成立せず
民事再生法適用を申請

マレリHDが「異例の法的整理」を選んだ理由、帝国データバンクが解説マレリ本社(撮影:帝国データバンク)

 経営再建中の大手自動車部品メーカーの持ち株会社「マレリホールディングス」(以下マレリHD、さいたま市)は6月24日、東京地裁へ民事再生法を申請し、同日再生手続き開始決定を受けた。

 帝国データバンクによれば、負債総額は1兆1856億円(2020年12月末時点)。1兆円を超える負債を抱え、2017年6月に民事再生法を申し立てたエアバッグ大手の「タカタ」(元・東証1部上場)と並び、製造業で国内最大級の負債額となった。なお、債権カットの対象は金融機関のみで、一般の商取引債権は全額弁済される見通し。

 3月1日にグループ会社5社で私的整理の一種「事業再生ADR手続き(裁判外紛争解決手続き)」を申請していた。その後はスポンサー候補に対して支援要請するとともに、金融機関との交渉を進め、抜本的な合理化を内容とする事業再生計画を作成していた。

 しかし、6月24日開催の第3回債権者会議において、必要となる全金融機関の同意が得られず、ADR手続きが不成立となり、マレリHDのみ民事再生法を申請。「簡易型」の民事再生手続きを選択することとなった。