遊園地「無事故」にかかるお金とは?ジェットコースター1両に“1億円超え”もPhoto:Kris Rowberry / 500px//gettyimages

テーマパークでは時々事故が起こる。その中でも特にジェットコースターなど絶叫系アトラクションはスリルと恐怖を感じることが狙いなので、「危険」と感じられるかもしれない。しかし、できる限り事故が起こらないように、テーマパーク側は安全面を計算した上でアトラクション設計をし、整備点検を行っている。では、どういった点検をしているのか、どれくらいのコストをかけて安全を守っているのか。来園者側からは見られない、テーマパークの一面を解説する。(テーマパークコンサルタント 清水 群)

15年前のジェットコースター事故
安全向上のために日々進化

 今から15年前、2007年5月5日にゴールデンウイークでにぎわう遊園地でジェットコースターの死亡事故が発生した。

 事故が起きたのは、かつて大阪府吹田市にあったエキスポランドだ。「風神雷神2(正式にはアラビア数字)」というジェットコースターのホイールを支えている車軸が折れ、座席が傾いたまま走行、走路脇の手すりに衝突した。乗客1人が亡くなり、重軽傷者34人という大惨事になってしまった。

 この事故以来、機械が壊れたことが直接的な原因であるアトラクションの死亡事故は発生していない。この事故はしかるべき点検が行われていれば、本来起こるはずがなく、以後徹底されるようになったからである。

 さらに、こういった重大な事故を受け、点検の報告制度が厳格になったり、法令の改正によって後述するような安全確認内容の広がりなど、アトラクションの安全向上に関する環境も向上している。

 そこで、今回は遊園地関係者でなければ知る機会がないであろう、安全を守るための整備やコストについて解説したい。

 来園者を「楽しませる」には「安全・安心」が絶対に守られなくてはいけない。そのために、テーマパーク・遊園地側はどれくらいの費用をかけて、どんなことをしているのだろうか。