アジア諸国の中央銀行は自国通貨の暴落を防ぐ戦いで敗北するかもしれない。今はドルに対する需要が非常に強いためだ。もっとも、アジア通貨の下げ方は均一ではない。 東南アジア第2位の経済大国であるタイの中央銀行(タイ銀行)は、低迷するタイバーツを観光業の回復が救い、大幅な利上げを回避できるとみている。バーツの対ドル相場は年初来で8%安に沈む。エネルギーを輸入に大きく依存するインドも苦境にあるが、欧米経済が冷え込み、それによってエネルギー価格が下がれば、一息つけるかもしれない。インドネシアやマレーシアといった資源輸出国の通貨は、他のアジア通貨よりも若干健闘している。主要16通貨のバスケットに対するドルの価値を示すウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)ドル指数は、年初来で10%高となっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が根強いインフレや世界的なリセッション(景気後退)の確率が高まる中、利上げを断固継続する構えのため、投資家はドルを長らく手放さない可能性がある。多くのアジア中銀にできるのは、秩序ある自国通貨安を望むことぐらいだ。