「あれ、よさそうですね」

 「髪が薄くなったら、あれにすればいいよ」

 私の周囲でも、これまでのカツラの概念をくつがえす画期的な増毛法として期待する声をたくさん聞かされた。

 トサカ頭のヘビメタ・ミュージシャンも登場して、「えっ、あんな髪型もできちゃうの!」と驚嘆させた。腕に貼りつけて強く引っ張ってもビクともしない。多くの人たちが目を見張ったのも当然だ。

 私自身、それが本当に実用的な製品ならば試してみたいと思った。そこで実際に使った人の感想を聞いたり、製品を見せてもらったことがある。すると、CMで感じるほどの救世主的な商品でなさそうな現実が浮かび上がってきた。

 「そのまま髪を洗えるといいますが、テープを貼った上からですから、頭皮自体は洗えません。一週間もしたら頭がかゆくてたまりませんでした。しかも、貼ったカツラを剥がしたときの臭いといったら強烈で」

 絆創膏を何日かして剥がすときの臭いが頭全体から漂って耐えられなかったと、その知人は言った。たしかに、CMには、かゆみも、臭いも映らない。

 考えてみれば、CMの情報は一方的で、都合のいい角度からしか商品をアピールしない。ウソは言っていないが、現実のすべてを伝えているわけではない。見た側が勝手に期待や幻想をふくらませる作りになっていることに案外、気がつかない。

 私はあのCMが流れ、「もっと引っ張って!」みたいに登場人物が叫ぶたびに、「横に引っ張って!」と突っ込んでいた。ステッカーや絆創膏をはがすとき、真上に剥がす人がいるだろうか。あれは髪の毛が着いているため真上から引っ張っても不自然に見えないところがミソで、頭皮に沿ってステッカーを剥がすように力を加えたら果たしてどうだろう?