データ共有、ネットワーク効果で、リアルの世界で起こっていることをデジタル化して、デジタルツインで仮想空間においてシミュレーションして最適な組み合わせを算出し、リアルにフィードバックするには、全体が可視化されなければなりません。IoT(モノのインターネット化)を活用して収集されるデータを、コモンズの中で共有します。

 産業や地域、あるいは、国レベルでそのような活動を進めれば、全体最適化によって無駄な資源が費やされることもなくなり、コミュニティに属する個人や企業にとっても無駄なコストを支払うことがなくなり、社会価値と経済価値が同時に実現できることになります。

 カーボンニュートラルを目指す上では、デジタル・コモンズのプラットフォーム上で、CO2排出のデータを使いながら、もっと適切な材料を使うようにコミュニティで努力したりすることが社会価値になりえます。デジタル・コモンズを作ることで、外部不経済を減らしていくことができるのです。

 ドイツの自動車産業のサプライチェーン全体で部品、素材のカーボンニュートラルを目指すアライアンス「Catena-X」では、情報やデータを拠出し合って共有のプラットフォームをつくっています。

 欧州、特にドイツは、大義や基本原則があれば、それに応じた動きが起きやすい傾向にあります。インダストリー4.0もそうでした。ドイツには小異を捨てて大同につくという社会風土があり、デジタル・コモンズを形成しやすいのです。

――カーボンニュートラルの話もしかりですが、近年ますます顕著なSDGsやサステナビリティなどのトレンドと、デジタル資本主義はどう関わるのでしょうか。

 こうしたトレンドはデジタルと相性が良いと言えます。というのはSDGsの目標達成においては、デジタルでいろいろなものを可視化し、対策を打っていく必要があるからです。社会がデジタル化すれば、それだけ持続可能性の取り組みも加速することになります。

 DESI(デジタル経済社会指標)が高いほどSDGsインデックスも高い、すなわち、デジタル化が進むほどSDGsの取り組みが進みやすいというデータもあります。経済成長と持続可能な社会の両立にはデジタル化が重要な意味を持つのです。