野村総合研究所(NRI)代表取締役会長 兼 社長。1985年東京大学大学院工学系研究科機械工学科修了、同年NRI入社。1994年台北事務所長(1995年同支店長)、2000年産業コンサルティング部長、2004年執行役員コンサルティング第三事業本部長、2010年常務執行役員コンサルティング事業本部長、2013年常務執行役員コンサルティング事業担当、2015年代表取締役専務執行役員ビジネス部門担当。2016年代表取締役社長、2019年から現職。共著書(監修)に『デジタル資本主義』『デジタル国富論』『デジタル増価革命』(いずれも東洋経済新報社)など。 Photo by Ryo Otsubo
モノの大量生産を基盤とする産業資本主義から、データ活用で付加価値を高めるデジタル資本主義へ。この変化を象徴して野村総合研究所が打ち出した新概念が「増価蓄積」。工場など有形資産の再生産を図るために会計制度化した既存の「減価償却」に対応する。この変化の中、日本企業はDXでいかに生産性を高めるか。一連の分析を『デジタル資本主義』(2018年)、『デジタル国富論』(2020年)、『デジタル増価革命』(2022年)で示してきた同社の此本臣吾社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド社 ヴァーティカルメディア編集部 編集長 大坪亮、構成/奥田由意)
デジタル資本主義は
産業資本主義とどう異なるか
――今日の経済・社会の特徴を、「デジタル資本主義」、「デジタル増価革命」という言葉で捉えられています。このような概念、考え方が生まれた経緯を教えてください。
デジタル資本主義の考え方の出発点は、2017年にさかのぼります。野村総合研究所(以下、NRI)の調査で、所得が伸びないにもかかわらず、消費者の生活満足度が高まっているという傾向が見られたのです。それにはデジタルが関係しているのではないか、という仮説を立てました。
いろいろなデータを突き合わせてみると、インターネットのサイトで、より良い品質のものを、より安く、より簡単に買えるようになったなど、デジタルの活用レベルが高い消費者ほど生活の満足度が高いことがわかりました。