2021年暮れ、マサチューセッツ州に建設中だった高級マンション「セントレジス・レジデンス・ボストン」のセールス責任者だったキャシー・アンジェリーニ氏は、立て続けに内見が入ったことで喜びをかみしめていた。それまでは長らく販売が低迷していた。状況が好転するきっかけとなったのは、米製薬大手ファイザーのある社員が485万ドル(約6億6700万円)の物件購入を即決したことだという。ボストン湾を見渡す16階の邸宅だ。その2時間後、モデルナ幹部が同じ物件に目をつけた。偶然にもファイザー社員が気に入って購入を決めたと明かすと、「彼は真剣なまなざしで私を見つめ『同じ家がほしいが、ファイザーよりも一つ上の階にする必要がある』と話した」という。この顧客はその日、17階の物件を495万ドルで購入する契約を結んだ。