Photo by Yasuo Katatae
2024年10月24日、給料日の前日に船井電機は突如として破産した。創業から73年、2000人を超える従業員の生活を一日にして崩壊させた騒動で、最後の社長は何を知り、何を語るのか。新刊『社喰い』から、船井電機破産の舞台裏を追ったルポを、抜粋してお届けする。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)
疑惑の300億円流出
真相を知る元社長
ビルの下には、約束の15分前に着いた。
2025年1月、ようやくアポイントが取れた取材だったため、気が急いていたのかもしれない。少し早いかと思ったが、来訪した旨を伝えると事務所内へ通された。
「こちらでしばらくお待ちください」
取材相手の代理人弁護士の事務所職員にそう勧められたソファには、既に先客がいた。
どこかで見た顔――。
廊下は人がようやくすれ違うことができる程度で、少し窮屈な空間だ。先客にコートの裾や鞄が当たらないように気を付けて前を通る。コートを脱いでソファに座ろうとした時、その人の横顔が視界に入った。
今日の取材相手である船井電機の前社長、上田智一氏だった。ソファの隅に、背中を丸めて座っていたからか、全く気が付かなかった。
給料日前日の破産
その理由とは――。
2024年10月24日、船井電機は突如として破産した。
独創的な商品を作る名門と言われ、北米でもブランド力を誇っていた会社が破産したとあって、大きな話題を呼んだ。
それと同時に、約300億円もの会社資金が流出したことが明らかになり、元社長である上田氏には疑惑の目が向けられていた。
騒動から約3カ月が過ぎた今日の取材は、その真相に少しでも近付くための第一歩。 上田氏は、巨額の資金流出や経営悪化を招いたM&Aなど、船井電機が破産に至った経緯を知る人物であった。
さらに、破産直前まで代表取締役を務めていたことから、経営者としての責任も免れない。破産によって、船井電機グループ全体で2000人を超える従業員たちが一時、生活基盤を失ったのだ。
その状況を今、どう捉えているのか。
責任を感じて意気消沈しているのか。はたまた、自身に責任はないと強気の論理を展開するのか。取材を前に話しかけるのもどうかと思い、縮こまって座る上田氏の横で黙って待った。
上田氏がどのような態度で、何を主張するのか、あれこれ考えをめぐらせていると、上の階にある会議室へ移動することになった。
会議室まで歩く途中、上田氏は私に話かけてきた。しかも、それまで私が考えていた“あれこれ”を吹っ飛ばす意外すぎる話題で。







