「学芸大附属国際」が実践するユニークなIB教育手法「ISSチャレンジ」発表風景。後期課程(高校)の生徒が中心のところに、1年生が登場して話題となった 写真提供:東京学芸大学附属国際中等教育学校

国際バカロレア(IB)ではどのような学びが実践されているのか。名物イベントである「ISSチャレンジ」の様子を見ながら、東京学芸大学附属国際中等教育学校で日々行われているユニークな教育手法について触れてみよう。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

「学芸大附属国際」が実践するユニークなIB教育手法

坂井英夫(さかい・ひでお)
東京学芸大学附属国際中等教育学校副校長、修士(教育)


1963年生まれ。東京学芸大学D類理科卒業。理科教員(高校化学)として神奈川大学附属、品川女子学院を経て、東京学芸大学附属高等学校に。この間、同大学院で理科教育学を学ぶ。2020年より現職。著書に『実験問題35』(エスイージー出版)。

 

IB的学習の成果を競う「ISSチャレンジ」

――国際中等教育学校(International Secondary School/ISS)のユニークな試みとしては何が挙げられますか。

坂井 普段の授業の中でも探究的な活動はやっていますが、「ISSチャレンジ」が面白いと思います。1人でもグループでも参加できます。部活動に相当する時間、放課後や休日に率先して取り組み、最終的にはコンペのように1年の最後に発表するもので、その舞台に立つことが最高の栄誉となります。

――何人くらいの生徒が、その栄誉に浴するのでしょう。

坂井 グローバルとサイエンスの2つの部門がありまして、昨年度はいずれも40件以上の応募がありました。3学期の中旬に各部門4件ずつのファイナリストによる発表が行われます。毎年、先輩のようになりたいと、生徒が応募してきます。これが6年間ある中等教育学校のいいところです。生徒にはやらされている感じは全くありません。こうすることで素晴らしい学びが得られるという認識ですね。

「学芸大附属国際」が実践するユニークなIB教育手法[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――1学年が130人程度でしょうから、けっこうな参加率かと。他にはどのようなテーマがありましたか。

坂井 ファイナルに残ったテーマを挙げてみましょうか。

 グローバル部門では、「Teen Awareness and Innovation for Dating Domestic Violence Prevention」「エシカル消費に対する社会貢献的意識の実態」「プラスチック製品の紙素材による代替商品の開発」「バスで快適な通勤・通学を目指す」でした。

 サイエンス部門では、「シュウ酸カルシウム結晶の合成―針状結晶の合成に必要な要素の発見―」「医薬品が植物の成長におよぼす影響とその解明」「花を食べる生物とアントシアニンの関係―ナメクジと餌と腸内細菌層の変化ー」「身近に存在するマイクロプラスチックの測定」といったところです。

――それらのポスター展示が廊下にありましたね。参加者は5年生が中心ですか。

坂井 5年生が多いです。セミファイナルまで進むとポスター展示が行われます。

 ところが昨年は、バスの乗り方や渋滞しない運行の仕方を調べた「バスで快適な通勤・通学を目指す」を行ったのが1年生でして、みんな目を丸くして驚いていました。入学して1年目の生徒がファイナリストとして出てきて素晴らしい発表をしたこともあり、“下克上”みたいな感じで、生徒の刺激になっていましたね(笑)。

――社会性もあるし、現実性もあるし、テーマの選び方が抜群ですね。

坂井 バスの運行という意味では社会的なテーマですが、その生徒のメンターとして数学の教員がアドバイスをしていましたので、統計の要素も使っていました。先生方も「あれが1年生!?」とびっくりしていました。

――そういう生徒は学校としてもウエルカムですね。

「学芸大附属国際」が実践するユニークなIB教育手法ISSチャレンジには、グローバルとサイエンスの2つの部門がある。校内課題研究発表会は、エントリーされたものの中からセミファイナリストとファイナリストがそれぞれ選ばれ、校内に展示される。そして、各部門4件ずつのファイナリストによる口頭発表会が実施され、その栄誉は年度ごとにプレートが掲示される
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