不確実性を乗りきるためにリーダーに必要な3つのことphoto AC

自然災害や戦争、感染症などに加え、近年はサイバーリスクやガバナンスリスク、事業継続リスクなどさまざまなリスクが生まれ、企業や組織はその対応に苦慮している。時代とともに変化、増大するリスクを、経営者やリーダーはいかにマネジメントしていけばいいのか。書籍『なぜリスクマネジメントは組織を救うのか』では、リスク管理のスペシャリストである著者の勝俣良介氏が、そのヒントと実践法を語っている。

予測できるリスクと想定外のリスク

 リスクマネジメントについて考え始めると、やるべきことが多すぎて途方に暮れることがあるかもしれません。しかし自然災害や感染症、情報漏洩、大規模システム障害など、すべて認識できなかった不確実性でしょうか。実は、誰かが警告してきたリスクばかりです。

 こうしたリスクにつまずいた組織は、果たしてリスクを真剣に考え準備をしてきたでしょうか? パンデミックについてはもう何年も前から警告がなされていましたが、いざ顕在化してみれば、在宅勤務ができる環境が整っていないなど、多くの問題が噴出しました。でもこれは、逆にいえば、私たちは、たいていのリスクなら予測できるということでもあります。

 同時に、すべてのリスクを想定するのは難しいということも、私たちは学んでいます。東日本大震災では、大津波の影響で福島第一原発の大事故が発生しました。熊本地震では、本震クラスの大地震が2回も連続して起きたことで被害が大きくなりました。「どうしたって想定外は起きる」ということも我々は謙虚に受け止めるべきだと思うのです。

組織にとっての最大のリスクとは?

 それでは、「たいていのリスクなら予測できる(でも、多くの人は本気にせず油断している)」こと、「(私たちは神様ではないのでどうしても)想定外は起きる」ことの2点から、これからの不確実な世の中を乗りきるために私たちは何を学べるでしょうか。シンプルにまとめるとしたら、次の3つになるでしょう。

 1つ目は、ライフルで獲物に照準を定めるかのように、重大なリスクに対して真摯に向き合うことです。そのためにも、たくさんあるリスクのなかで、あなたがリーダーとして目指したいと思っている目標や戦略に対して、真に影響を与えるリスクは何か、それをしっかりと見つめ直すべきです。

 2つ目。狙う獲物に集中しながらも、時おり自分が置かれている環境を客観的に評価できるようにしておくこと。時間をかけて中期目標や戦略を立てても、いつの間にかそもそもの大前提が変わっていることもありえます。その意味でも「1年に1回、リスクを洗い出してあとは向こう1年間対応するだけ」という考え方は捨てましょう。環境変化の兆しに耳を澄ませるのです。

 3つ目。それでも想定外は起こるので、だからこそ、組織に、臨機応変の対応力や柔軟性を持たせるようにするべきです。いつも頼りにしていたAさんが突然、長期療養に入ったらどうするのか? 基幹システムがまったく使えなくなったらどうするのか? そんなことを1カ月に1回、5分でも10分でもいいので考えるのです。

 この3つを実践するためには、あなたがどのような規模・種類の組織を率いるリーダーであっても、その組織の目標達成のために、リーダーであるあなた自身が、リーダーシップを発揮しなければなりません。リスクマネジメントが真価を発揮するかどうかはあなた次第。つまり、組織にとっての最大のリスクはリーダーであるあなた自身なのです。