市場の低迷にどう対処するかを巡り、シリコンバレーで相反する動きが起きている。一方で株式市場の変動および景気後退の見通しに対する懸念があり、他方で投資家が準備する資金が記録的な額に上る中、スタートアップ企業は相反するシグナルを受け取っている。ベンチャーキャピタルの中にはスタートアップに迅速な支出を促すところもあれば、深刻な景気後退で大幅な経費削減が必要になると予測するところもある。こうしたパラドックスは、マクロ経済の現実と、シリコンバレーのインセンティブ構造――創業者と投資家は成長とリターンを追求するために多額の資金を使うよう促される――とのせめぎ合いを浮き彫りにしている。今回の市場低迷の異例さも際立っている。ドットコム・バブルの崩壊と2008年の金融危機からは、今の経済的問題を乗り切るための指針をほとんど得られない。今回は過去40年間で最悪のインフレ、ウクライナでの戦争、サプライチェーン(供給網)の混乱、約30年ぶりの大幅な利上げが重なっているためだ。