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インキュベーションの虚と実

起業家教育の旗手スティーブ・ブランク氏に学ぶ
シリコンバレーの経験を集約した経営・教育ツール

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第19回】 2013年1月21日
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 クレイトン・クリステンセン(Clayton Christensen)教授が「私たちのためになにかをやってくれるように、プロダクトを雇っているのだ」というように、またセオドア・レビット(Theodore Levitt)教授が「ドリルじゃなくて穴が欲しい」というように、顧客が何がしたいか(ジョブ=jobは何か)が問題だ。

 顧客はそのジョブにあたって、使い方の学習やメンテナンスなど苦痛(pains)を経験することになる。そして、そのジョブを成し遂げると、利得=gainsが得られる。これらをマッピングし、製品/サービスをテストしていく。

 バリュープロポジション(value proposition)は顧客にもたらす価値のことだ。このキャンバスでは、顧客/ユーザーの、ジョブ、苦痛、利得を右にまとめる。そしてこれらに対して、やろうとするビジネスがどう応えていくかを左にまとめる。製品/サービス、苦痛を取り除く(pain killers)、利得を創造する、という三つについて考え、マーケットに適合するかを議論するのだ。

 ビジネスモデルは顧客開発プロセスで検証・改善するが、バリュープロポジションはリーンスタートアップのサイクルで検証し改善していく。

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バリュープロポジション・キャンバスは、プロダクト・マーケット・フィット、つまり製品・サービスが市場にマッチしているか議論するベースをつくるツールだ。まだ出来たてのツールだが、とてもシンプルであり、使ってみる意義はありそうだ。

バリュープロポジション・キャンバスの考え方 Photo by S.H
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 リーンスタートアップは、下手にやると多様な要素を細かく考えすぎて、混乱することもなきにしもあらず。出発点として、こういったシンプルなキャンバスに整理しておくのは有効だろう。

 また、それ以前の課題として、ソリューションを一方的に提供しようとして何の問題も解決しないスタートアップのアイデア、つまり顧客の苦痛も解消しないし利得も与えない製品/サービスに陥ることを、避けることができる。

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本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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