補助金制度の活用では
応募のタイミングに注意

「カルチャーサロンは、宿泊客以外も利用可能です。地域住民や日帰り旅行客にも利用してもらい、伊豆全体の活性化につなげたいと考えています」(嶋田氏)

 背景にあるのは伊豆地域の宿泊客数の減少だ。静岡大学の教員らによる分析によれば、去年1年間の宿泊客数は579万5000人。コロナ前の2019年と比べ46.2%減少している。経済波及効果も4474億円から2486億円と半分近くまで落ち込んだ。

 コロナ禍で失った客足をどう戻すかが今後の大きな課題となっているのだ。

「コロナ直前から比べると、我々のホテルも集客率は25%ダウン。2カ月半ほど休業せざるをえなくなり、かなり厳しい状況になりました。ちょっと予約が増えたと思っても、感染者数が増えたという報道があれば、キャンセルが続くということを繰り返しています」(嶋田氏)

 感染対策のための高機能換気システム(ロスナイ)や、消毒器の設置、殺菌対策などが急ピッチに進められ、今も緊張感のある営業が続く。今後も感染対策の徹底は続くが、同時進行的に、ポストコロナに向けた営業も考えなければならない。カルチャーサロンの企画はそうした中で生まれたという。また、ポストコロナ時代の働き方として注目されているワーケーションにも力を入れ、家族旅行を楽しみつつ仕事をしたい人に向けて、専用のワークスペースも用意した。

 事業再構築補助金には、通常枠、緊急対策枠などさまざまな種類があり、従業員数によって補助金額、補助率が変わる。熱川プリンスホテルでは、新規事業に向けて1億5000万円の見積もりを出し、そのうち8000万円が補助金で補填されることになっている。

「補助金によって新しいチャレンジができることは、大変ありがたい」と嶋田氏。しかし、大規模な補助金制度ならではの注意点も。

「補助金の採択が決まるタイミングは、全業種同時です。そのため物資や工事業者の、奪い合いが始まるケースもあります。どのタイミングで応募するかは、慎重に見極める必要があります」