熱川プリンスホテルのサロンスペースでは、伊豆の海を見ながらのフラダンス講座も熱川プリンスホテルのサロンスペースでは、伊豆の海を見ながらのフラダンス講座も

ポストコロナ、ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応することを目的に中小企業庁が始めた「事業再構築補助金」の制度を使って、新たな試みにチャレンジしている宿泊業者。補助金によってどんな新プランが生まれたのか?ポストコロナ時代に合わせた宿泊施設ならではの戦略を聞いた。(ライター 中村未来)

カルチャーサロン開設で
集客を図る熱川プリンスホテル

 事業再構築補助金の総予算は1兆1485億円。中小企業でも最大6000万円もの補助金を受け取ることができるこの制度は、医療、福祉、製造、農業などでも利用でき、業界の縛りはない。「思い切った事業再構築」が採択の条件である。現在まで7回の公募が行われ、1回の公募につき2万件以上が応募。都度、半数弱が審査を通過している。

 さまざまな企業が補助金を活用して新分野展開や事業転換に踏み切っているが、中でも消費者に最も関係してくる業界の一つが宿泊業。施設のリニューアルのほか、カフェやダイニングの増設、新規イベントの開催など、コロナ禍で遠ざかった客足を取り戻すため、各社、渾身の企画を準備している。せっかく旅行に行くのであれば、そういった楽しみが用意されているホテルは気になるところだ。

 東伊豆にある「熱川プリンスホテル」では、事業再構築補助金を使って、新たに「マルチスペース茅舎(BOUSHA)」を新設した。この施設では、「自分磨き」と「地域交流」をテーマにした、カルチャーサロン「mizi-cul(以下、ミヂカル)」が開設される予定。代表の嶋田愼一朗氏は言う。

「ポストコロナ時代、お客様により楽しんでもらうために我々に何ができるか考えたとき、施設の有効活用がすぐに思い浮かびました。お客さまにとっては1泊2日の滞在でも、ホテルの建物は毎日その場にあります。コロナ禍で失われたコミュニケーションの場を活発化させるためには、この空間をもっと活用すべきだと考え、カルチャーサロンの開設を決めました」(嶋田氏)

 ミヂカルでは、伊豆の海と空、自然豊かな空間を感じるヒーリング講座や、伊豆の自然素材を独創的にアレンジするクラフト講座など、伊豆に関連する13講座が開講される。

 コロナ禍でオフラインでの学びの場がなかった分、ポストコロナ時代には、人々の交流の場の需要が大きくなるだろうと嶋田氏は予想する。

 さらに、昨今ブームとなっている“大人の学び直し”プランも。8月7日より開講予定の『温泉石鹸作り教室』では、石鹸をハンドメードしつつ、人と環境に優しい成分や、家庭での取り入れ方を学ぶことができるという。伊豆にリフレッシュに来たついでに、知識やスキルを身に付けることができるというわけだ。