累計90万部を突破した「わけあって絶滅しました。」シリーズは、絶滅した生き物がみずからその「理由」を語るという、ちょっと変わった人気の図鑑。この図鑑が大型展覧会になった『わけあって絶滅しました。展』が、大阪南港ATCホールで9月4日まで開催中だ。
「やさしすぎて絶滅」、「デコりすぎて絶滅」等々、驚きの理由で絶滅した⽣き物たちを見て、遊んで、学べる、夏休みにぴったりなイベントとして、大きな注目を集めている。
広大な会場スペースには、絶滅した生き物の化石や標本、そして「絶滅した理由」を解説したパネル等が400点以上も展示されている。そこで子どもも大人も楽しめると話題の本イベントの見どころを特別にリポートする。
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「知りたいだろう?なぜ、絶滅したのか?」
猛暑や急な強い雷雨といった異常気象のニュースが続くと、だれもが「このままで地球は大丈夫なのか」という不安をおぼえる。この地球にはじめて生命が生まれたのは、およそ40億年前。そして人類の祖先の誕生は、200万年から300万年前とされている。
生命誕生から現在までの時間で考えると、わたしたち人類の歴史はまだまだわずかと言えるが、その長い時間の中で地球上に生まれた生き物のうち、これまで99.9%の種が絶滅してきたという。
この数字を聞くと、地球上に生まれた生き物はいつか絶滅する運命で、むしろ生き残ることのほうが稀なのかもしれない、と思えてくる。そしてその絶滅の理由は、「え?そんなことで?」と驚いたり、身につまされたり、人間の残酷さを反省したりと、じつにさまざま。
たとえば、パンダの出現によって絶滅したとされているギガントピテクス。パンダとギガントピテクスが食べていたのはササ。栄養が少ないササは大量に食べる必要があり、身長3mと体が大きかったギガントピテクスは、ササ不足で絶滅してしまった。パンダとの「ササ食い対決」で有利になりそうな「大きい」ことが、不利に働いたのだ。
一見すると「有利」そうなことも、環境や条件次第では「不利」になってしまうこともある。『わけあって絶滅しました。展』では、こうした「絶滅理由」を紹介しながら、もはやこの世にはいなくなってしまった生き物たちを見て、知って、学ぶことができる。
「トリケラトプス」がお出迎え
まずは会場入り口に、現在の北アメリカで暮らしていたトリケラトプスのレプリカが鎮座している。恐竜好きにはたまらないお出迎えだ。このトリケラトプスは、階段上の2階から見下ろすこともできる。この角度から見るトリケラトプスはなかなかレア。普段見えづらいところの骨格も見え、いきなりワクワクが止まらない。
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会場に入ってまず度肝を抜かれるのが、動くオパビニアとアノマロカリス。かわいい?いや、すごく不気味?ともにカンブリア紀中期に生きたかれらの動きは、とてもシンプル。その原始的な動きが、ロボット感と絶妙にマッチしている。
「わけあって絶滅しました。」シリーズに登場する生き物の中でもとくに人気のオパビニアは、その「デコりすぎちゃった自慢のボディ」を、アノマロカリスは「トゲトゲのゾワッとするルックス」をぜひ、堪能いただきたい。
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恐竜のいた時代へタイムスリップ
そして子どもたちにひと際人気なのが、全長12mを誇るティラノサウルスの全身骨格。やっぱりティラノサウルスは大きくてかっこいい。ここではVR双眼鏡で目の前に恐竜が蘇った映像も楽しめる。
さらには、アロサウルス、ステゴサウルス、スピノサウルスなどの化石も展示されており、恐竜のいた時代へとタイムスリップできる。
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ぜひとも見ていただきたいのが、やさしすぎて絶滅したステラーカイギュウの全身復元骨格。書籍『わけあって絶滅しました。』のトップに登場するステラーカイギュウは、人間に襲われている仲間を見て、「大変!助けなきゃ!」と集まったところをさらに人間にごっそり狩られてしまう。その結果、発見されてからわずか27年で、人間の乱獲によって絶滅してしまった。
主食がコンブだからパワー不足で、速く泳いで逃げることもできなかったというのも、なんともやさしくて切ない。
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同じく人間による乱獲で絶滅したグリプトドンの化石も圧巻だ。「甲羅がいろいろ便利!」と人間に乱獲されたことによって絶滅した理由の通り、非常に立派な甲羅を見ることができる。
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わけあって、なんとか生きのびました
そしてこの展示会で出会えるのは、絶滅した生き物だけではない。稚魚がとられすぎて絶滅しかかっているニホンウナギや、まゆにこもって生きのびたハイギョなど、わけあってなんとか生きのびていたり、いままさに絶滅しそうな絶滅危惧種も紹介されている。
氷が少なくなって絶滅しそうなホッキョクグマを救うVRアトラクションもある。ここでは地球温暖化で解けていく氷の上に立ち、海に落ちないように新しい氷へと乗り移って行くゲームが体験できる。また恐竜の大腿骨やフン、そして生きたカブトガニに触ることができるコーナーも用意されているので、会場全体が見るだけではなく、触って、遊んで、楽しむことができる構成になっている。
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展示物は全体として古生代、中生代、新生代と時間の流れにそって展開されていくので、各時代にどんな生き物が栄え、そして絶滅していったのか理解できるようになっている。めずらしい骨格標本の写真を撮ったり、「絶滅理由」を紹介したパネルをひとつひとつ読みながら会場を回ると、あっという間に数時間が経過していた。広々とした会場では、適度なソーシャルディスタンスを保つこともできた。
展示を見終わると、地球、そして次世代の未来を守っていかなくては、という気持ちに自然となっていた。猛暑が続き、地球の環境変化を日々感じる中でいろいろなことを考える良いきっかけとなった。ぜひ、多くの方々に『わけあって絶滅しました。展』に訪れていただきたい。
【イベント概要】
『わけあって絶滅しました。展』
会期:7月22日(金)〜9月4日(日)
会場:大阪南港ATCホール
主催:アジア太平洋トレードセンター、関西テレビ放送、東映
公式サイト:https://www.ktv.jp/event/wakezetsu/