「おしっこのしすぎで絶滅」
「背中が無防備で絶滅」
「方向性を見失って絶滅」……

思わず気になる「絶滅理由」を紹介する『わけあって絶滅しました』シリーズが巷で話題となっている。第1弾が発売されるやいなやテレビ・ラジオで話題となり、第2弾の『続 わけあって絶滅しました。世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』と合わせて68万部のベストセラーとなった。

児童書として発売された本書だが、意外なことに「生存競争の過酷さ、生き残りのコツがビジネスの参考になる」とビジネスマンからの共感も集めている。生き物達の驚くべき進化、そして襲いかかる理不尽な環境の変化が、現代社会とどう重なるのか。今回特別に『わけあって絶滅しました』の内容を一部抜粋・編集してお届けする。

残酷すぎる絶滅理由。「やさしすぎて絶滅」したステラーカイギュウ

今からそう遠くはない1768年に絶滅した、ステラーカイギュウという生き物をご存知でしょうか? 北太平洋のベーリング海にくらし、海藻を食べていた、全長8メートルほどもある巨大なほ乳類です。

かれらは、人間の手によって滅ぼされました。

『わけあって絶滅しました』では、その悲しく、切ない絶滅理由を一人称でかれら本人にかたってもらう形式で紹介しています。

残酷すぎる絶滅理由。「やさしすぎて絶滅」したステラーカイギュウ
 ぼくは北極に近い海で2000頭のなかまとくらしていたんだ。あのころは幸せだったなあ。喧嘩もせず、ぼくらはコンブばっか食べてた。コンブをかみしめ、幸せをかみしめ。地味だけど、平和な毎日だった。

 そんなある日、ぼくらのところにたくさんの船がやってきた。どうやらぼくらを偶然つかまえて食べた人間が、「うまい!」ってうわさを広めたみたい。それで肉や皮をとるためにやってきたんだ。

 当然、にげたさ。でもね、速く泳げないんだよ。主食がコンブだから。それにぼくらは傷ついたなかまを見捨てることができなかった。

 だから、なかまが人間におそわれると、みんなで集まって一生懸命助けようとしたんだ。それで人間たちにまとめてつかまっちゃったのさ。

ステラーカイギュウは寒い海に適応し、脂肪をたくわえて大型化したジュゴンのなかま。

現在のジュゴンやマナティは水中の植物を奥歯などですりつぶして食べるが、ステラーカイギュウは歯をもたず、海藻を歯ぐきでかみちぎって食べていた。

なかまが攻撃されると、集まってきて守ろうとする性質があったため、ひじょうに人間につかまりやすく、発見されてからわずか27年で絶滅してしまった。

(本原稿は丸山貴史著『わけあって絶滅しました。 世界一おもしろい絶滅したいきもの図鑑』の内容を編集して掲載しています)