「窓」とは何か 体験して感じたオンライン会議ツールとの違い「窓」を介したインタビューの様子 Photo:MUSVI

コロナ禍の2年半で、ZoomやTeamsなどのテレビ会議システムを使ったり、スマートフォンのテレビ電話を使ったりする機会が激増した。言い換えれば距離の制約を越えて「バーチャルで会う」ことを経験した人が世界中で激増したわけだが、便利さを実感する半面「リアルに会うのとは違う」と思うのもまた事実。今回インタビューした阪井祐介さんは、あたかも同じ空間にいるような自然なコミュニケーションを可能にする「窓」の開発者だ。阪井さんが窓を「どこでもドアのようなもの」と表現する理由とは。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

ソニーで20年前から「窓」を開発

「20年以上、どこでもドアのようなものを作っています(笑)」

 阪井祐介さん。距離の制約を超え、あたかも同じ空間にいるかのような自然なコミュニケーションを可能にする「窓」の開発者だ。

 1999年ソニーに入社。入社2年目で、次世代リーダーを発掘・育成する社内教育機関「ソニーユニバーシティ」の1期生に最年少で選出され、「窓」の開発を始めた。当時のCEO出井伸之さんには「窓の少年」と呼ばれた。以来、世界初カメラ内蔵テレビの開発を始め、120に及ぶ特許を取得するなど「技術のソニー」を体現してきた人だ。2022年、MUSVI(ムスビ)を創業。「窓」の本格的な社会実装を進めている。

 阪井さんは、「この20年、ほふく前進を続けているかのようでした」と笑う。常に成果が求められるビジネスの世界で、「窓」の必要性を理解してもらうまでに20年かかった。行き詰まるたびに、井深大さんら偉大な技術者が遺した「ソニーの魔法」に救われたという。諦めを知らない技術者の20年が知りたくて、阪井さんを訪ねた。