クールビズやテレワークの浸透などの背景もあって、25年で売り上げ7割減と縮小し続けるスーツ市場。大手紳士服店“洋服の青山”は今、顧客であるビジネスパーソンとの共創コミュニティによって変わろうとしている。「コミュニティリーダーズサミットin高知(CLS高知)」で、青山商事 リブランディング推進室の平松葉月さんが語った「競合他社を気にするよりも、やるべきこと」とは。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
25年で7割減、苦境に立たされる紳士服業界
かつて、ビジネスパーソンの必需品だったスーツ。しかし今や状況は一変している。
総務省の家計調査によれば、1991年には年間2万5000円を超えていた1世帯当たりのスーツ購入額(スーツ、ネクタイ、ワイシャツの合計)は、2016年には3割以下に縮小している。25年で実に7割減したことになる。特にここ10年は、節電意識の高まりや柔軟な働き方の浸透によって、堅い職場でもポロシャツ、ノーネクタイが受け入れられるようになってきた。追い打ちをかけるようにコロナ禍だ。テレワークが増え、スーツを着る機会は一気に減ってしまった。
青山商事リブランディング推進室の平松葉月さんは「紳士服業界は下がり調子。コロナ禍で、必要のないブランドだと認知されてしまっている」と語る。「洋服の青山」のブランド認知度は90%前後と非常に高い。しかし、「自分が着たいブランド」としては、想起されにくいというのだ。
「お客さまや社会より、競合他社ばかり見て仕事をしてきた結果、外の世界との接点がほとんどない閉じた会社になってしまい、社会から取り残されようとしていました」(平松さん)
ライバルを見ることも大事だが、それが過ぎると「他社が作ったからうちも」が商品開発の起点となってしまい、本当に必要とされる商品の追求が難しくなっていく。
平松さんは今、NewsPicks Creationsとともに始めた共創コミュニティ「シン・シゴト服ラボ」で、顧客であるビジネスパーソンと一緒に新たなビジネスウェアを模索中だ。異業種をいくつか経験し、青山商事に入社して約3年。“外”から来た平松さんだからこそ、できることがある。