前回は、ミンツバーグ教授の「リフレクション・ラウンドテーブル」を中心に、企業で行なわれる「経験学習」の意義と課題について、重光直之・ジェイフィール取締役と松尾睦・神戸大学大学院経営研究科教授に意見を交換してもらった。今回は議論をさらに深めてもらい、リフレクションの仕組みが根付く企業はどう強いのか、ミドルマネジャーが成長するために、経験学習を日常業務にどう活用すべきかを分析する。(まとめ/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

仕事を面白くするには?
他者とのつながりが成長の源

松尾睦・神戸大学大学院教授(左)と重光直之・ジェイフィール取締役(右)

重光 松尾先生は、セッションの参加者たちがリフレクションを通じで自分の能力をストレッチしていく(引き上げる)ためには、エンジョイメント(おもしろがり力)も重要になると指摘されています。では、ミドルマネジャーたちが職場で、「やりがいのある仕事にしたい」「仕事を面白くしたい」という思いを強く持てるようになるには、どうしたらいいでしょうか。

松尾 やはり、普段からどういう人と接しているかという「つながり」が大きく影響します。熱い人と話していると自分も熱くなるという「思いの伝染」のようなものはある。人は自分1人だけのエンジンで走っているわけではなく、他人に勇気付けられたり、癒されたり、あるいは批判されたりして、エネルギーを補給することが大事です。

 東大の中原先生が、「つながり」について面白いことを言っています。自分とつながっている人を緊張屋と安心屋の2つに分けているんですね。安心屋は「頑張ってるね」と褒めて元気付けてくれるのに対して、緊張屋は「そんなことやってたらダメだよ」と本質的なことをズバッと指摘してくれる。そういうタイプの違う人と付き合うことで、バランスを保てるというのです。

 自分も、あまりやる気が出ず、「ストレッチ力が落ちているな」と感じた時期がありました。そこで、普段ならあまり会いたくない緊張屋の友人に会ってみたんです。相変わらず厳しい指摘をされましたが、そのときは「そうだね」と真剣に聞きました。やはり、ほめてくれる人と叱ってくれる人からの多面的なフィードバックがリフレクションには欠かせないと思います。