「マネジメントの本なんか読んだって、役に立たないよ」。ある日、友人がふと漏らした。たしかに、マネジメントに「こうすればよい」という正解はなく、状況に応じた最適解をその都度見出していくものだ。では、いったいどうすればよいのか?

 あなたが夜遅く、外出先から帰社したとしよう。まだ若手社員が居残り残業をしている。「遅くまでお疲れさま」と声をかけたものの、彼/彼女はいつも遅くまで残っており、残業制限をとうに超過しているはずだということが頭をよぎった。

  このとき、あなたならどう対応するだろうか?

①「いつも残業続きで大変だな。もう今日はいいから早く帰りなさい」と、帰宅を促す。
②「あんまり遅くならないようにな。無理するなよ」と、残業を黙認する。
③「何を抱え込んでいるんだ。見せてごらん」と、仕事に直接介入する。

 状況によってはどれもが正解になりうるし、この中に正解はないかもしれない。

 マネジメントとは、そこに至った背景と、人間関係を含む複雑な要因が絡む絵模様の中で、ひとつの言動を選択したり、あえて何も選択しなかったりする行為である。

 その多くは、日常の中で瞬間的・反射的に行われている。本がまったく無駄だとは言わないが、「読むだけ」でマネジメントを会得するのは相当に難しいだろう。見開き2ページで問題解決ができるほど現実は甘くはない。

マネジャーの仕事は、誰かに「教え授かる」ものではない

 それは、研修の世界も同じである。ピーター・ドラッカー教授と並び称される世界的経営学者、ヘンリー・ミンツバーグ教授は、従来の知識偏重の座学スタイルの限界とともに、世界の潮流は大きく変わりつつあると指摘する。

 ミンツバーグ教授はかねてより、「マネジャーの仕事は誰かに『教え授かる』ものではない」と主張しており、「日々の自分の経験から学ぶ」方法を第三世代と称して以下のように説明している。