日本にマインドフルネスを取り入れるべき理由

【9割の社長が知らない】頑張らなくても心と体が同時に癒される、たった1つの習慣星 友啓(Tomohiro Hoshi)
スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長
経営者、教育者、論理学者
1977年生まれ。スタンフォード大学哲学博士。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒業。教育テクノロジーとオンライン教育の世界的リーダーとして活躍。コロナ禍でリモート化が急務の世界の教育界で、のべ50ヵ国・2万人以上の教育者を支援。スタンフォード大学のリーダーの一員として、同大学のオンライン化も牽引した。スタンフォード大学哲学部で博士号取得後、講師を経て同大学内にオンラインハイスクールを立ち上げるプロジェクトに参加。オンラインにもかかわらず、同校を近年全米トップ10の常連に、2020年には全米の大学進学校1位にまで押し上げる。世界30ヵ国、全米48州から900人の天才児たちを集め、世界屈指の大学から選りすぐりの学術・教育のエキスパートが100人体制でサポート。設立15年目。反転授業を取り入れ、世界トップのクオリティ教育を実現させたことで、アメリカのみならず世界の教育界で大きな注目を集める。本書が初の著書
著者公式サイト】(最新情報やブログを配信中)

関根:残念ながら日本の10代若者の死因1位が自殺です。

 なぜ日本では自殺や精神疾患が多く、精神病床数も世界一多いのか。

 諸外国の場合、精神疾患で入院し1ヵ月で退院できても、日本では9ヵ月以上かかってしまう現状があります。

 また、2019年度の内閣府の統計では、引きこもりの数が、40代から60代までで推計61万人、若年層では推計54万人といわれています。

 そして「80代(90代)」の親が「50代(60代)」の引きこもりの子どもと同居して経済的支援する、いわゆる「8050(9060)問題」も起きていますよね。

 それらの原因は、日本人へのメンタルケアが全くされていない現状にあり、日本は「メンタルケア後進国」といえます。

 だからこそ、これからの日本では心のケアが重要で、現状を変えていくにはマインドフルネスがとてもよい手段になると思ったのです。

星:たとえば、マインドフルネスの効果に関する研究は、どのようなものに注目されていますか?

関根:マインドフルネスの効果はさまざまな場で実証されています。

 カリフォルニア州のいじめが多かった学校では、マインドフルネスを導入したら脳の状態がよくなり、IQ・EQも上昇して、いじめが減少したという結果が出ています。

 また、刑務所で犯罪歴のある人にマインドフルネスを導入したところ、出所後の再犯率が減ったというデータもあります。

 実際に私のジムでも、脳波や自律神経の乱れを測定し、ストレスや睡眠の質などを可視化しつつ、身体のトレーニングだけではなく、マインドフルネスもふんだんに取り入れています。

 そのプログラムを3ヵ月受けると、確実によい状態に変化していきます。

 精神疾患の薬や睡眠薬が手放せなかった人が、全く内服しなくてもすごせるようになる、といった劇的変化の事例も多数あります。

 このように、身体と心、そして社会的な健康を持続的に守っていくウェルビーイングの観点から、マインドフルネスのメソッドを日本に広げる活動をしています。

どのようにマインドフルネスを
世の中に広げていくか

星:すでに身体や心の健康を保てなくなっていて、まだマインドフルネスに触れたことのない方々に対して、関根さんはどのようなサポートが必要だとお考えですか?

関根:私は自殺を減らすための一般社団法人Wishの代表もしていますが、そこで自殺未遂した100人以上に、それを「どうやって乗り越えたか」というアンケートを取りました。

 そのとき、「一人で乗り越えられた」「国の相談ダイヤルで助かった」と言う人はほぼ皆無です。

 では、どうやって乗り越えたかというと、「先輩がずっと励ましてくれて」「恋人がずっと支えてくれて」「家族の一言で」「友達がサウナ連れてってくれて」「後輩が一緒にごはんにいこうと誘ってくれて」というように、『』が関わっていたのです。

 ですから、本当に厳しい状況にいる人を支えられるのは、その人の近くにいる家族や友人や恋人です。

 そういう人たちに、マインドフルネスのメソッドを届けるにはどうしたらいいのか考えたときに、多くの方は仕事をしているので、その職場の上層から始めたほうが早いと考え、今は経営者に対してマインドフルネスを広げています。

 まずは経営者が社内で実践しつつ、企業で習慣化し、結果が出てきたら、今度は社内だけでなく彼らの家族にも広めるように伝えていく、という狙いです。

星:様々な視点から、いかにマインドフルネスが私たちにとって重要であるかについて大変わかりやすくお話しいただき、ありがとうございました。

 次回は、マインドフルネスを実際に、私たちの日常に取り入れて活かしていくためには、どうしたらいいか。より実践的なお話を伺っていきたいと思います。

(次回につづく)