ディスプレーにはない身体性を持ち、その柔らかさ故に、人間の体にも心にも優しく寄り添う……。柔らかい素材でできた「ソフトロボット」は、これまで人工物と人を隔てていた境界を溶かし、両者のインタラクションを大きく変容させる可能性がある。前編に続き、女性エンジニアユニット「CHORDxxCODE」のソン・ヨンア氏、橋田朋子氏、上岡玲子氏の3人と共に、次世代の体験価値のデザインを考える。(聞き手/音なぎ省一郎、坂田征彦、構成/フリーライター 小林直美)
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誰でも作れるソフトロボット
――そもそも「ソフトロボット」とはどのように定義される存在でしょうか。
ソン そのままですが「柔らかいロボット」です(笑)。もう少し詳しく言うと、センサーやアクチュエーター、表面素材などが柔らかい物質で構成されているロボットとなります。工学分野としては「ソフトロボティクス」と呼ばれていて、駆動原理や素材はさまざまです。現在企画中のワークショップでは、空気で膨らます「インフレータブルロボット」というカテゴリーに入るロボットを扱います。といってもピンとこない人が多いので、会社を辞めて研究者に戻ったとき、もっと分かりやすくソフトロボットの種類や作り方を共有するサイトを立ち上げたりしました。
――紙や布のような身近な素材で、歩いたり、伸び縮みしたりする仕組みが手軽に作れるんですね。
ソン ハードなロボットだと、しっかり論文を読んで、設計通りにきっちり作らないと駄目ですが、ソフトロボットは素材によって作り方が違ったり、論文に解釈の幅があったりと、デザインの自由度が高いんです。
橋田 専門家でなくても、子どもでも作れるし、間口が広いですよね。
ソン 以前、ビニールシートを熱圧着して中に空気を入れて動かすシンプルなソフトロボット(パウチモーター)を作るワークショップを数多く行ったんですが、何度やってもいつも新しくて面白いデザインに出合えるんです。デザインの自由度がとにかく高いですね。