「空飛ぶタクシー」の早すぎた野望 独リリウムPhoto:John Keeble/gettyimages

――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 独新興企業リリウムが開発を手掛ける「空飛ぶタクシー」は、レオナルド・ダビンチが16世紀に発明した潜水服に匹敵するかもしれない。いつの世にも時代を先取りした発明はあるものだ。

 エアタクシーとも呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL)が1兆ドル(約137兆円)の「空のウーバー」市場を開拓するというウォール街の大言壮語は無視しよう。通勤客を運ぶにはヘリポートの数が足りるはずがない。とはいえ、ヘリポートがいくつかあるだけで、近隣の都市や地方への移動は今のように空港を利用するよりは便利になるかもしれない。とりわけ、エアタクシーがうたい文句通り、ヘリコプターに比べて5分の1の運航コスト、100分の1の騒音で済むなら、その可能性は大きい。

 複数の企業がeVTOLの導入を検討している。先月リリウムへの出資を発表したヘリ運航会社の米ブリストウ・グループ、ヘリ・プライベートジェットサービスの米ブレード・エア・モビリティー、米ユナイテッド航空やアメリカン航空などだ。さらに、小荷物配送市場にも大きな可能性が眠っている。