中国では、過去20年間の不動産ブームで多くの世帯がより豊かになったと感じていた。しかし市場環境が一変した現在、資産価値の減少を受けて支出を抑制している家計も多く、景気減速に拍車を掛けている。数十の都市で新築・中古住宅の平均価格が昨年9月以降下落しており、回復の兆しは見られない。多くの不動産開発業者がデフォルト(債務不履行)に陥り、建設を中断したため、売り上げが減少し、市場への信頼感が一段と失われている。中国の不動産所有者の多くは現在、住宅価格がさらに下落する可能性を懸念し、支出を抑え、貯蓄を殖やしている。上海在住のシャーロット・タンさん(39)は、保有するアパートを売却し、もっと立地が良い大規模なアパートにより多額の資金を投資する計画を立てていた。ところが、上海で今春、新型コロナウイルスの感染拡大による2カ月にわたるロックダウン(都市封鎖)を経験し、不動産市場の混乱を目の当たりにしたことで経済状況への自信を失い、急きょ計画を断念したという。