米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを着実に進め、金融引き締めが雇用市場の減速を招くとの予想を隠そうともしていない。「求人募集」の看板が随所にあふれる中で、雇用市場が近く勢いを失うとは想定しがたい。米労働省が30日発表した7月の雇用動態調査(JOLTS)では、求人件数が1120万件となった。これは同月の失業者1人当たり2件の求人がある計算で、この割合は3月につけた過去最高に並んだ。不動産や小売りといった一部業界が弱含む中でも、雇用主の旺盛な求人需要に陰りは見えない。このような状況が続く限り、雇用の伸びが大きく鈍化するとは考えづらい。実のところ、雇用市場で最大の制約となっているのは、今でも雇用主側が惜しまず支払える賃金水準で人材を確保する能力だろう。つまり、賃金上昇圧力は企業利益にとって脅威であり続けるとみられる一方、FRB当局者にとっては、労働コストがインフレ高止まりの要因になると警戒する理由が増えるということだ。