「筑波大附属中」、日本の中等教育を先導する授業とは附属中学校の校旗を挟んで水上勝義校長と升野伸子副校長

日本の公立中学校における先導的な教育を実験的に探るのが、筑波大学附属中学校の使命である。100年以上前から入門期を音声中心に学ぶ英語授業を続け、短期留学も整え、現在はICT(情報通信技術)教育の実践を着実に進めている。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

「筑波大附属中」、日本の中等教育を先導する授業とは

水上勝義(みずかみ・かつよし)
筑波大学附属中学校校長、筑波大学人間総合科学学術院教授

医学博士

 

1959年東京生まれ。筑波大学医学専門学群卒。都立松沢病院精神科医師などを経て、2012年筑波大学大学院人間総合科学研究科教授に就任、22年4月より筑波大学附属中学校校長も兼務。

 

バランスの取れた人材を育む

――水上校長は大学の教授も兼ねていらっしゃるのですね。

水上 大学院人間総合科学研究科の教授と兼任しています。幸い、東京メトロ「茗荷谷」駅に近い東京キャンパスですので、附属中学との移動はしやすいのですが。

「筑波大附属中」、日本の中等教育を先導する授業とは[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

升野 大学院と本校と本務が二つある中、「校長先生ならでは」のことをお願いしています。中学校は行事などで校長先生の役割はとても大きいものがあります。

水上 毎週月曜に全校集会があり、そこで2~3分のスピーチを行っています。その内容を考えるのが結構大変でして(笑)、毎週スピーチすることはこれまでなかったので、「校長先生の訓話」とか「今日は何の日」のような本やサイトにも目を通しました。「今日の話は心に刺さりました」と言われると、やっていて良かったなと思います

――筑波大学の附属校の校長には大学の教授が就くと聞いています。

水上 私は精神科医です。10年ほど前に、治療から予防に重点を移して、メンタルヘルスやストレスマネジメントを研究するようになりました。筑波大の場合、こうした専攻は体育系にあります。

 筑波大学附属の場合、中学校の校長は体育系(人間総合科学研究科)から就任することが多く、私の前には柔道やダンス、コーチング、健康教育学など、運動の専門家が代々続いています。 

――そうでしたか。ところで、水上校長はこちらのご出身でしたか。

水上 いえいえ、開成です。硬式野球部に所属していたことがあり、2年先輩に岸田文雄首相がいました。中高一貫の男子校とはだいぶ雰囲気が異なると実感しています。

 筑波大学医学群の同級生には数人の筑波大附属高校出身者もいました。コミュニケーション力も優れています。人間的にも素晴らしい方が多いという印象を持っています。

――バランスの取れた人というイメージですね。共学校で、男女で仲が良いですし。息子の1人が学習院高等科だったので、6月のスポーツの定期戦「附属戦」、こちらからすると「院戦」にはご縁がありました。

水上 それは附属高校の行事ですね。開成との定期戦もあります。毎年4月に戸田漕艇場で行われている「ボートレース」です。入学早々、先輩から「声を出せ」と応援歌を歌わされ、鍛えられました。中高一貫校ですと、高2・高3年生は雲の上の存在です。こちらに来て、これも附属高校の行事であることを知りました。

――中学から高校へは、どのくらいの人数が進めるのですか。

升野 筑波大附属の小中高は、互いに連携しています。とはいえそれぞれ校長も別で、小学校と中高では敷地も異なります。内部連絡入試によって附属小からは、附属中の定員の6割ほどが入学します。附属中から附属高へは、約160人が進みます。

「筑波大附属中」、日本の中等教育を先導する授業とは中学校舎全景。左端には育鳳館