2012年はまれに見る政治の年だった。日米中露仏韓と世界の主要国で、政権が替わるか、新政権が発足した。それを投影して経済も不安定だった。さて、安倍新政権は、対外的には日中、日韓の関係改善という難題を抱える一方、大幅な金融緩和と財政出動を掲げてスタートを切る。政府部門はGDPの200%にも達する借金を抱え、再生は容易な道ではない。「巳年」の巳は草木の成長が極限に達して、次の生命が創られることを意味するという。果たして、日本は再生の糸口を見つけらるのか。そうした状況下、2013年を予想する上で、何がポイントになるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、5つのポイントを挙げてもらった。今回は、外交・安全保障に詳しい田中均・日本総研国際戦略研究所理事長に意見をうかがった。

たなか・ひとし
1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、財団法人日本国際交流セ ンターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる
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①日中、日韓関係は修復に向かう

理由:日、中、韓における新政権の誕生、オバマ米国大統領の再選により、これまで国内世論に大きな影響を受けていた各国の対外政策は、一旦リセットされることとなり、尖閣問題、竹島問題で揺れた日中、日韓関係も調整局面に入る。しかし安倍政権が、歴史問題の見直しや尖閣諸島の実効支配強化に向かった場合には、これまで以上に北東アジア情勢は緊迫する。

②北朝鮮情勢は一旦さらに緊迫、後に交渉局面に入る

理由:韓国の朴保守政権の発足で、北朝鮮は核実験を含めた強硬策に出てくる可能性があるが、他方、年後半には北朝鮮の施策も手詰まりとなろうし、交渉の局面に入る可能性が高い。