変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。本連載では、そのために必要なマインド・スキル・働き方について、同書の中から抜粋してお届けする。

仕事が終わらない人の「時間の使い方」3つの共通点とは?Photo: Adobe Stock

「時間の使い方」の三つの共通点

 皆さんのまわりにも、仕事が終わらずに常に残業をしてしまっている人がいるのではないでしょうか。

 世の中には「エクセルの作業スピードを10倍速にするための本」や「会議を効率的に運営するための本」など、多くのノウハウ本があります。

 それらが無駄ということでは決してありませんが、本日はそもそもの「時間の使い方」について解説します。仕事が終わらない人には「時間の使い方」に三つの共通点があります。

①タスクリストを作っただけで終わっている

 一つ目は、タスクリストを作っただけで終わっている点です。

 タスクを書き出して、緊急度と優先度に従ってタスクに優先順位をつけることは重要ですが、それをスケジュール帳に書き込まない限り、期限までにすべてを完了させることは難しいでしょう。

 なぜならば、優先度の高いタスクというのは恒常的に発生するからです。

 期限が1週間先の重要度が高い仕事よりも、明日中に仕上げてほしいとのタスクが顧客から舞い込んだら、そちらを優先せざるを得ません。話し好きの上司から、仕事中に話しかけられるかもしれません。

 それらを繰り返していると、意図せずとも一度に複数のタスクに取り組んでいるマルチタスクの状態に陥ってしまいます。結果、期限が1週間先の重要度が高いタスクに取り組む時間は、意図せず削られてしまいます。

 タスクリストを作っただけで満足せず、全てのタスクはスケジュールに落とし込んで、それぞれにしっかりと時間を割り当てておきましょう

②作業見積もりが大雑把すぎる

 二つ目は、作業見積もりが大雑把すぎる点です。

 タスクを開始すると、予期していなかった出来事が往々にして発生します。資料に使うためのデータ取得が思うように進まないかもしれません。最終確認をするために印刷をしようとしたら、プリンターが故障しているかもしれません。

 また、前述のように、優先度の高いタスクが舞い込むことも常日頃あります。ギリギリに終わるような余裕のないスケジュールや、作業工程の想定が甘く追加工数の発生が避けられないようなざっくりとしたスケジュールでは、予定が狂うことは必至です。

 タスクはできるだけ細分化して、それぞれのタスクに余裕のある時間を見積もりましょう

③振り返って無駄なタスクを排除していない

 三つ目は、振り返って無駄なタスクを排除していない点です。

 いくら現実的なスケジュールを作成しても、そもそもの無駄なタスクを減らす努力をしない限り、仕事が勝手に減ることはありません。皆さんも、誰にも使われない定期レポートの作成や誰も発言しない一方通行の会議への参加など、思い当たる節があるのではないでしょうか。

 誰もが何となく無駄なタスクだと感じていても、強い意志を持って具体的に排除しようとしない限り、タスクが勝手に減っていくことはありません

 定期的に振り返って、無駄なタスクを排除しましょう。本当にやるべきタスクは、多くの場合において10分の1程度に減らせます

アジャイル仕事術』では、時間管理の具体的な方法以外にも、答えのない時代にすばやく成果を出すための技術をたくさん紹介しています。ぜひご一読ください。

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。