変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、6月29日発売)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)で、IGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏だ。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていく時代。これからは、組織に依存するのではなく、一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルにならざるを得ない。本連載では、そのために必要なマインド・スキル・働き方について、同書の中から抜粋してお届けする。

【コンサルが解説】PDCAより今の時代に合う仕事術!「10年後を構想」するための思考法とはPhoto: Adobe Stock

新型コロナウィルスがもたらした新たな機会

 2019年末から世界中を混乱におとしいれた新型コロナウィルスは、一方で多くの新たな機会をもたらしています。

 皆さんの中にも、以下のような変化があったのではないでしょうか。

 ●これまで外食ばかりしていたが、自粛期間に自炊する楽しみを覚えた
 ●初対面のあいさつは対面で名刺交換することを常識と思っていたが、ウェブ会議で初対面のあいさつをすることに抵抗がなくなった
 ●交通の便が悪い土地に住むことなどないと思っていたが、地方の実家でしばらく仕事をしたら、豊かな自然に囲まれた田舎の魅力に気がついた

 このような変化が突然起きると産業構造(ビジネスの環境)が大きく変わります。外食店は淘汰されるかもしれませんが、オンラインで地方の珍しい食材を売っている企業への特需が発生したりします。地方の不動産価格が上がり、過疎化していた田舎がスマートシティへと変化を遂げることがあったりします。

 これらはあくまでも短期的に起きている変化で、10年単位の長いスパンで考えると、より大きな構造変化が起きることが予想されます

現状を改善するのではなく、未来を創造する

 では、大きく変化する環境で生き残るには何をすべきなのでしょうか。そのためのポイントは、現状を改善するのではなく、未来を創造することです

 日本企業の特技の一つにPDCAというものがあります。PDCAによって改善を繰り返していくと、品質の高いものを、安く、早く提供することはできるようになりますが、前述の業界の淘汰に対しては、最も脆弱になってしまいます。

 既存の業界、既存の組織、既存の制度に対して最適化していくことはゴールが決まっているときや平時には有効ですが、VUCAの時代にはデメリットしかありません

 これまでに経験したことのない事態が起こってしまう、大前提が簡単に覆るVUCAの時代には、過去の経験にヒントを求めて今あるものの延長線上で考えても、妙案は生まれません。

足し算思考ではなく、引き算思考をする

 私たちは、既に保有しているものをもとに思考しがちです。そのほうが簡単ですし、メリットが見えやすいという特徴がありますが、一方で過去の産物の上に積み上げていくので、余分なものが膨れ上がっていくというリスクをはらみます。また、そもそもの大前提が崩れてしまった場合には、うまく機能しなくなります。

 例えば、皆さんが過去に保有していたガラケー(ガラパゴス携帯)を思い出してください。おそらく、たくさんのソフトウェアがインストールされていたと思いますが、すべての機能を使いこなしていた人は多くなかったでしょう。

 家にあるテレビのリモコンには、ボタンがいくつあるでしょうか。コンビニの店頭に表示されている決済手段は、いくつあるでしょうか。

 PDCAによる改善を繰り返していくと、いまあるものをより良くするための思考になりがちです。これらはすべて足し算思考です。

 それに対して、10年後を構想するために必要となるのは、引き算思考です

 足し算思考と引き算思考の特徴を、下図にまとめたので参照してください。

 日々の生活の中で、以下のように引き算思考を試してみてください。

 ●満員の通勤電車で押しつぶされているのなら、全く移動しないためにはどうすればいいかを考えてみる
 ●上司から何のフィードバックも得られない無駄な会議に辟易しているのなら、会議をなくすにはどうすればいいか考えてみる。もしくは上司がいない世界を想像してみる
 ●スマホ画面を一日5~6時間も見ていて、生活をスマホに支配されているのなら、スマホを持たないで生活することを想像してみる

 このように引き算思考の練習を繰り返すと、今あるものに影響されずにゼロベースで構想することができるようになります。

 いまあるものの延長で考えても、せいぜい5年後の未来しか構想できません。

 10年後を見すえるためには、引き算思考を使って、目の前にあるものの意義や価値を疑ってみることが大事です

坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。
2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。
現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
IGPIグループを日本発のグローバルファームにすることが人生の目標。
細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。
超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社、2022年6月29日発売)が初の単著。