日本を含む東アジアや東南アジアの一部の国では、マスク着用が続いていて、ある意味、「社会的な同調圧力」となっている。対して、欧米は個人の判断に委ねられている結果、マスクを着用しない人が増えている。実は、マスク着用は日本人が想像する以上に、グローバルビジネスの障壁にもなる。世界96カ国を訪ねた元外交官が解説する。(著述家 山中俊之)
想定外に注目された天皇皇后両陛下のマスク
天皇皇后両陛下にとって即位後初の海外訪問となった、英国エリザベス女王の国葬出席。喪の儀式ということもあり、晩さん会などでの具体的な言動の報道は制限されていた。
そうした状況で、注目されたのがマスク着用の有無やその色だった。天皇皇后両陛下が国内では公には着用していない黒のマスクをされていたこと、葬儀に出席の際にはマスクをされていないことが話題になった。
外務省は、天皇皇后両陛下や首相が各国要人と会談する際のマスク着用について、常に検討していることは間違いない。ただ、ここまで話題になるとは思っていなかっただろう。安倍晋三元首相の国葬においては各国要人にマスク着用を求めた。
コロナ禍になる前であれば考えられないような報道だが、マスク着用に関する諸問題は、メディアでもたびたび取り上げられ、SNSでもよく議論になっている。マスクが日常生活の必需品であり、下着のように人前で脱がないものになったことの比喩表現で「顔パンツ」という言葉まであるらしい。
このマスク問題は、感染症対策として有効か否かだけが問題というわけではない。社会の文化、さらにはコミュニケーションスタイルにもつながる大きなテーマだ。そして、文化やコミュニケーションスタイルは、ビジネスシーンにも大きく影響を与える。
次ページ以降では、日本を含めたアジア諸国と欧米諸国を比較して、マスク着用に関する文化とコミュニケーションスタイルの相違について述べていく。日本人が知らない欧米とのマスク文化格差、同調圧力の有無からコミュケーションの圧倒的な違いまで考えてみたい。そして、マスクに関してグローバルに活躍するビジネスパーソンは絶対に注意するべきことがある。