母が78歳で認知症に、仕事・ワンオペ育児・介護をこなす40代の息子が悟った「優先順位」写真はイメージです Photo:PIXTA

仕事を続けながら介護や子育てをするワーキングケアラー、子育てをしながら介護をするダブルケアラーの人たちが研さんした技術は、ビジネスの現場でも生かせる。具体的なケースからその神髄を学んでいこう。第5回は、仕事をしながら家事、3人の子どもの育児、認知症の母親の介護を行っていた当時40代の男性、三井さんの事例だ。(ライター・グラフィックデザイナー 旦木瑞穂)

孫たちに慕われていた
母親の異変

 関東在住、現在50代の三井晃之さん(仮名、既婚)は、30代の妻と中学2年生の長女、小学6年生の長男、小学3年生の次男の5人家族。

 妻は障害者施設で働いており、遅番・早番に加え、夜勤も土日勤務もある。夫婦で話し合った結果、比較的残業のない三井さんが家事・育児をメインで行うことになった。

 三井さんは、ネットワーク製品の開発などを行う会社の技術者だったが、2017年からは総務に異動。きっかけは、母親の介護だった。

 母親は、三井さんがまだ10歳の頃、夫の暴力から逃れるために、5歳上の姉だけを連れて家を出ている。

 姉と三井さんが独立した後、母親は父親と連絡を取るようになったが、父親が女性関係で再び荒れ始めたため、母親は父親を見限る。すると父親は酒浸りになり、70代前半の頃、肝硬変で亡くなった。

 母親は、三井さんの家から車で10分ほどの団地で一人暮らしをしていたが、三井さん一家が遊びに行くと、手料理を振る舞って迎えてくれた。そんな母親を、孫に当たる三井さんの子どもたちも慕っていた。

 ところが、2016年の夏頃、当時78歳の母親に異変が起きた。