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スマートフォンの理想と現実

昨年とは大きく違う「成熟と停滞」のCES2013
何かが大きく変わる直前の“嵐の前の静けさ”か
――ラスベガスCES会場から占う2013年【後編】

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第42回】 2013年1月25日
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 実際クアルコムはここにきて、その存在感を消費者に向けてアピールするようになった。また端末メーカーとのマーケティング面での協力関係も、強化しているようだ。これは正しくかつての「インテル入ってる(Intel Inside)」と同じアプローチである。

来客で賑わうクアルコムのブース Photo by Tatsuya Kurosaka  拡大画像表示

 しかし、クアルコムは本当に、パソコン全盛期の中心的な存在、すなわちマイクロソフトやインテルのような存在に、なるのだろうか。私はその見方には若干懐疑的である。

 理由の一つは、やはりOSが安定しないこと。パソコン時代は、Windowsが市場を圧倒的に支配したことで、産業としての安定的な成長がもたらされた。その圧倒ぶりに、マイクロソフトを批判する向きさえ多かったが、ソフトウェア産業や周辺機器産業が安定的に開発・販売を行えたのは、同社がそれらの産業を積極的にサポートしたからに他ならない。

 そして、そうしたマイクロソフトの支配を、ハードウェアの面で支えたのが、インテルだった。このウィンテル体制が、パソコンのパラダイムを構造化し、また安定させたということ自体には、おそらく異論がないだろう。

 では、クアルコムはスマートフォン市場で、インテルのような役割を担えるのか。あるいはスマートフォン市場で、かつてのマイクロソフトのような役割を担う事業者が登場するのか。ここまでのスマートフォン市場を見ると、それは疑わしい。

 おそらくそうした役割を担っていたのが、アップルのiPhoneだったということだろう。しかしアップルは、ソフトウェアや周辺機器、あるいはプラットフォーム運営の仕様や方針を、突然あっさり変更する。パソコン時代のマイクロソフトに比べても、産業全体を庇護しながら広げていこうという意識は、あまり見られない。

 ただこれをもって、アップルが悪いというのは、やや間違いである。スマートフォンという製品が、電話という「管理された品質の世界」の延長線上にあり、また物理的な制約がある以上、ある程度は安定していないと、多くの人が日常的に使う製品にはならない。一方で、特定事業者が市場を管理しようとすればするほど、開発の自由度は失われ、市場の多様性は減っていく。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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