【『世界一受けたい授業』で話題】
長引くコロナ禍の背後にある「厄介な問題」…
お腹の出っ張り以上に注意すべき
いまそこにある“カラダの危機”

長引くコロナ禍で、体を動かす機会がメッキリ減ってしまった人は多いはず。日ごろの活動量は減ったのに、なぜか食欲は減らない。飲食での摂取カロリーは多いのに、体を動かしての消費カロリーが減ってしまったのでは、太ってしまうのは当たり前かもしれない。そうこうするうちに内臓脂肪が蓄えられて、お腹がポッコリとせり出し、以前はすんなり入っていたズボンがパツンパツンになってしまったなんてことも。
それだけではない、もっと深刻な問題もある。骨の弱体化だ。外出することが減って日光を浴びる機会が少なくなると、ビタミンDが不足することによってカルシウム不足になり、骨が弱体化してしまうのだ。そのうえ運動不足になると骨への刺激が減り、これも骨の弱体化を招く原因になる。とくに高齢者は「転倒→骨折→寝たきり→認知症」と骨の弱体化による“恐ろしい負のスパイラル”に陥るリスクが高い。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』（日本テレビ系）、『金スマ』（TBS系）、『体が硬い人のための柔軟講座』（NHK）などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』（ダイヤモンド社）だ。本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳も体も若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、骨を強くする「骨トレ」の手法を紹介する。
（監修：田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師）

転倒による骨折は“致命傷”になりかねない

【前回】までは、フィジカルトレーナーの立場から、脳トレで認知症を防ぐ方法を紹介しましたが、やっておきたいことがもう1つあります。それは骨を強くする「骨トレ」です。

とくに高齢者には骨が弱っている人が多く、転倒などをきっかけに骨折するケースがあとを絶ちません。高齢者が骨折で入院すると、体を動かすことによる刺激がなくなるため、認知機能が低下したり寝たきりで要介護になったりするケースが多いのです。

「転倒→骨折→寝たきり→認知症」の恐怖

95歳で亡くなった私の祖父が、まさにそうでした。祖父は生まれつき丈夫で、若い頃から病気らしい病気をしたことがない健康体でした。90歳を超えて認知機能はやや低下していましたが、体は元気そのものでした。

ところが、自宅の庭で転倒して太ももの骨を骨折。それがきっかけで歩けなくなり、寝込んでしまうと、認知症が猛烈な勢いで進行してしまったのです。しばらくすると家族の顔すら見分けられなくなり、結局、骨折から1年ほどで亡くなってしまいました。

私はもっと身近で祖父のサポートをしたかったと、いまでも悔やんでいます。

高齢者の腰曲がりの正体は「骨折」

転倒を防ぐには、『10年後、後悔しない体のつくり方』で紹介しているような運動で、体の機能を高めておくことが大切です。それに加えて忘れてならないのは、「骨粗しょう症」の予防です。骨粗しょう症は、骨のカルシウムなどが失われてスカスカになり、骨量が減って骨密度が低下して、骨折しやすくなった状態です。

前かがみになったまま杖をついたり、シルバーカーを押したりして歩いている高齢者を見かけますが、その多くは骨粗しょう症で背骨（椎体）が弱まり、体の重みで潰れたままになる「圧迫骨折」を起こしているのです。

圧迫骨折で潰れてしまった背骨は、もとには戻らないので、腰が曲がった状態のままになってしまいます。

骨粗しょう症は、もはや“国民病”

骨粗しょう症の患者は、日本全国で1000万人以上います。その予備群を入れると2000万人に達するともいわれますから、まさに“国民病”なのです。何も手を打たないと、骨は年をとるほど弱くなりやすいです。

超高齢化社会が進んでいますから、骨粗しょう症の患者数は、今後さらに増えると予測されています。「骨粗しょう症→骨折→寝たきり→認知機能の低下」という、私の祖父と同じような悲しいコースをたどる高齢者が増えてくると、家族がつらいだけではありません。

広い視点でいえば、日本全体で医療費がかさむようになり、巨額の財政赤字を抱える国の財政をより悪化させる一因になりかねないのです。

※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、体が若返るメソッドがたくさん掲載されています。